
税理士がワークライフバランスを整えるためのキャリアパスや制度を解説
税理士がワークライフバランスを整えるにはどのような選択肢があるのかご存じですか?この記事では税理士が転職するうえで押さえておきたい転職先ごとの特徴やワークライフバランスを整えるのに役立つ制度などを分かりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.転職すべきは事務所?企業?ワークライフバランスを整えやすい転職先は?
- 1.1.税理士事務所
- 1.2.事業会社
- 1.3.コンサルティングファーム
- 1.4.開業
- 2.ワークライフバランスを重視するうえでチェックしておくべき5つの制度
- 2.1.育児・介護休暇の取得率
- 2.2.休職制度
- 2.3.フレックスタイム制
- 2.4.特別休暇
- 2.5.資格取得の補助
- 3.テレワークを導入している企業もおすすめ
- 4.まとめ
転職すべきは事務所?企業?ワークライフバランスを整えやすい転職先は?
税理士として専門性を活かした転職を検討する場合、候補となるのは他事務所、事業会社、コンサルティングファームの三種類があります。また、独立志向の強い人であれば、開業することも選択肢の一つとなるでしょう。ここではこれらの四つの選択肢を福利厚生と労働時間の観点から解説していきます。
税理士事務所
基本的に大手事務所は福利厚生が一般企業並みに充実しており、一般的には給与水準も業界水準より高めなのが特徴です。教育研修制度も充実しており、様々な面で働きやすい環境が整備されています。
一方、小規模事務所は福利厚生や給与面では大手に劣ることもありますが、代表の裁量が大きいため、大手事務所では対応してもらいにくい、個々人のニーズに沿った就業条件を提示してもらえる可能性があります。
ただし、大手と小規模事務所のどちらの場合でも労働時間は長めの傾向があり、繁忙期にはプライベートを犠牲にしなければならなくなる可能性があることも押さえておきましょう。
事業会社
税理士としての専門性を活かして事業会社に転職する場合は、経理財務部門に配属されることが多く、財務会計または管理会計を担当することになります。
求められる能力は転職者の年齢や企業の規模によって異なります。非上場企業では管理部門体制を整備できる力が求められ、上場企業では大企業の法人税務の経験が豊富かつ、かつ、英語力や国際税務などの専門知識が求められる傾向があります。
事業会社は税理士事務所と比べると、福利厚生や給与面が手厚いところも多く、社内研修などの機会も豊富です。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームに転職する場合はプロジェクトごとに労働時間や業務内容が大きく変動することを押さえておきましょう。
コンサルティングファームでは税理士としての専門性を活かしつつ、IPOやM&Aなどの案件に携われるのが魅力ですが、案件によっては激務になることもあり、帰宅もままならないこともあります。
大手であれば、収入面や福利厚生が充実しているところも数多くあり、外資系企業であれば、プロジェクト後に長期休暇を取得できることもあります。
ただし、多くのコンサルティングファームでは能力主義を採用している関係上、常に成果を出すことが求められます。社内での競争も苛烈なため、ゆっくりと働きたい場合には不向きです。
開業
転職とは少し異なりますが、税理士として独立することも選択肢の一つです。税理士として独立すれば、福利厚生や有給休暇などは利用できなくなりますが、働く環境や時間を自分で設定ができるという独自の魅力があります。自宅をオフィスにして開業すれば子育てや介護との両立もしやすくなるため、ワークライフバランスを整えるうえでは有力な選択肢となるでしょう。
顧問先の開拓には営業の手腕が問われますが、収入は青天井で伸ばしていくことができるため、やりがいをもって仕事に取り組むことができるでしょう。
ワークライフバランスを重視するうえでチェックしておくべき5つの制度
ワークライフバランスを重視して転職をする場合は、子育てとの両立や資格取得などに役立つ制度がないかを確認しておくことも大切です。ここではそのなかでも特にチェックしておくべき制度を5つ紹介します。
育児・介護休暇の取得率
育児・介護休暇は法律で定められた労働者の権利であるため、どの企業でも取得することができます。
ただし、これまで育休や介護休暇の利用が盛んではなかった企業の場合は、社内整備が行き届いていない可能性もあるので、過去にどの程度の人が制度を利用しているのか、面接で確認しておくようにしましょう。令和5年4月からは育休の取得状況の公表が義務化されるので、それ以降に転職をする場合は合わせて確認しておくのがおすすめです。
また、企業によっては事業所内に利用料無料の保育所を設置しているところやなかにはベビーシッターの利用料を負担してくれるところもあります。
なかには育休期間を3年間に延長しているところもあるので、育児のしやすい企業を探している場合は、それらの制度が充実しているところを探すのも良いでしょう。
休職制度
休職制度とは業務外の病気やけがで働けなくなった従業員に対して企業が解雇を一定期間猶予する制度です。休職制度があると、業務時間外のケガや病気で入院しなければいけなくなったときにも解雇を一定期間猶予してもらえるので、転職先の企業で長く働きたいときにはあると便利な制度です。
休職制度は企業の福利厚生の一環として提供されるものなので、制度の詳細は企業によって異なります。場合によっては精神疾患などは対象外となっていることもあるため、就業規則の記述をよく確認しておくようにしましょう。
フレックスタイム制
フレックスタイム制は労使が予め、月の総労働時間を決めておき、それに合わせて労働者が働く曜日や労働時間を自由に決められる制度です。フレックスタイム制を利用すれば、季節の行事や子どもの送り迎えなどがしやすくなるので、プライベートを大切にしたい方におすすめの制度です。
ただし、厚生労働省が実施した「令和2年就労条件総合調査」によれば、フレックスタイム制を導入している企業は全体の6%程度であり、まだまだ広く普及している制度とまではいえません。
転職の際には年収や福利厚生など、何らかの要素を犠牲にしなければならないことも覚悟しておきましょう。
また、フレックスタイムを利用する場合は、コアタイムを確認しておくことも欠かせません。コアタイムとは勤務が義務付けられている時間帯のことで、これが通院や送り迎えの時間帯と被ってしまうと、フレックスタイムを利用するメリットがなくなってしまいます。可能であれば、面接の際に確認しておくようにしましょう。
特別休暇
企業によっては年次有給休暇とは別に特別休暇を設けているところもあります。特別休暇は福利厚生の一環として付与されるものなので、付与される日数や種類は企業によってばらつきがあります。
「令和2年就労条件総合調査」によれば、特別休暇がある企業は全体の58.9%で、最も導入の盛んな夏季休暇は41,3%の企業で導入されています。企業によっては病気休暇や教育訓練休暇、リフレッシュ休暇などを設けているところもありますが、ごく少数なので、休暇を重視する場合はそれ以外の部分での妥協が必要になる可能性があることも押さえておきましょう。
なお、生理がひどい場合に取得できる生理休暇については労働基準法で定められた休暇であるため、就業規則に記載がない場合でも取得することができます。
資格取得の補助
起業によっては業務の遂行に役立つ資格の取得に補助を出しているところもあります。具体的な内容は企業によっても異なりますが、受験料や参考書の購入費、講習費用などの補助に加えて合格後に祝い金が支給されるところもあるので、スキルアップを重視する場合はそうした制度が充実した企業を選ぶのも良いでしょう。
テレワークを導入している企業もおすすめ
通勤にかかる時間を減らしたい場合はテレワークを導入している企業もおすすめです。
近年では新型コロナウイルスの流行に伴い、多くの企業がテレワークを導入するようになりました。なかには原則として勤務地を自由とする企業も登場するようになり、自宅やワーキングスペースを利用した働き方も浸透しつつあります。
行きかえりの通勤を減らしたい方や家族との時間を増やしたい方はテレワークを導入している企業を導入している企業を検討してみるのも良いでしょう。
まとめ
税理士として専門性を活かした転職をする場合、主な選択肢は他事務所、事業会社、コンサルティングファームの三つがあります。
それぞれの選択肢に一長一短があり、どの選択肢を選んでも何らかの面で妥協が必要になることを押さえておきましょう。
また、福利厚生の内容は会社ごとに異なりますが、いずれの会社を選ぶ場合でも育児・介護休暇の取得状況やフレックスタイム制の有無、特別休暇の日数などは確認しておくようにしましょう。万一に備えて休職制度が設けられている会社もおすすめです。