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【セミナーレポート】会計事務所を強くする辻・本郷の人材育成に迫る!

辻・本郷 税理士法人(以下、辻・本郷)とMikatus(ミカタス)株式会社は12月15日、「会計事務所を強くするこれからの人材育成」と題したオンラインセミナーを共同で開催しました。1,600人を超える従業員を抱える辻・本郷の人材育成ノウハウが示されたセミナーの模様をリポートします。

新人のスキルアップを阻害する四つの要因

セミナーは辻・本郷の鈴木正彦さん(DX事業推進室マネージャー)による三つの問いかけから始まりました。

  1. 同じ失敗を何回もしてしまう人はいないか?
  2. 法改正などの最新情報に疎い人はいないか?
  3. パソコンに疎く作業が遅い人はいないか?

これらの問いに当てはまる人材を育成し、戦力として活躍してもらうにはどうすればよいか。この課題に対して、辻・本郷ではさまざまな施策を実施し、失敗と改善を繰り返して現在の人材育成の形につなげてきました。それらの施策はいずれも「できることを増やすよりも、できないことを減らす」ことを指針としています。

「規模の大小を問わず、どこの会計事務所にも1、2、3の特徴を持つ人材が少なからずいます。こうした弱点を解消してスキルアップしてもらうには、できることを増やすよりも、できないことを減らすほうが有効です」

優秀だと思って採用した新人がなぜスキルアップしていかないのか。税理士の中には、この疑問を持つ人が少なくないと思います。この点について鈴木さんは四つの要因を挙げます。

  • 要因A:仕事の全体像が見えない
  • 要因B:必要なスキルと到達点が明確でない
  • 要因C:教える人によってスキルアップに差がつく
  • 要因D:できる・できないの評価が上司の主観に基づく

「例えば要因Aについて言えば、新人の最初の仕事が試算表の作成というケースは多いと思います。12か月の試算表を積み重ねて決算や申告書に結びつけるのですが、全体の業務の一部からスタートするので、目的やゴールがわからないまま作業をすることが少なくないのです」

こうした要因を解消していくことに重点を置いて、辻・本郷の新人研修は構成されたものだと鈴木さんは話します。

【セミナーレポート】会計事務所を強くする辻・本郷の人材育成に迫る!の記事中画像

研修体制を確立する前の辻・本郷では、知識の習得は各人の自習に任せていたため、人によって知識の偏りや習熟度の差が目立っていたとのこと。この課題に対して辻・本郷は毎月1回、全体研修を実施することにしました。ところが当初は外部の専門家を講師に招いていたこともあり、M&Aや事業承継、決裁の事例など、目の前の仕事から遠いテーマになることが多かったと言います。そのため受け身での受講となり、時間をかけたのに何も残らない研修になっていたそうです。

また知識の習得だけではなく業務の習得に関しても、①現場任せのOJTから始まり、②現場の担当者が新人研修の講師を兼務する期間を経て、③研修の企画・運営をするキャリアサポートグループの発足、という具合に、手探りで課題を克服しながら体制を整えてきたと鈴木さんは説明します。

①や②の時期は、教育する側の専門やスキルによって教える内容やレベルにばらつきが生じ、それがそのまま教育される側のアウトプットの質に影響していたそうです。

そのことに懸念を抱いた地方勤務のメンバーは、人材育成について次のことを話してくれたと鈴木さんは言います。

「顧問先数は増えていくものの、人材の流出によって一人ひとりの業務量が増えていったり、地方の事務所であるがゆえに人材の確保が難しく、入社したスタッフを育成する時間が取れなかったり、といったことは多くの会計事務所でも思い当たるのではないでしょうか?結果、人材育成の重要性や入社してくれたスタッフのありがたさを感じる反面、育成が思うように進まないことに矛盾を感じる人は少なくないと思います」

辻・本郷ではこうした試行錯誤を経て、スタッフの育成を第一のミッションとするキャリアサポートグループというチームの立ち上げに至ったのです。

新人研修で未経験者を最短でプロに

キャリアサポートグループが定めた新人研修のコンセプトは、新卒者や業界未経験者が3か月で顧問先を担当することです。そのために、次の三つを習得するよう導いていきます。

  1. 試算表や申告書などを作成するための実務力
  2. 試算表などの作成に必要な知識(法人税や消費税などに関する知識)
  3. わかりやすい決算報告など、安心を与える顧問先へのサービス力

これらを実際の育成プログラムに落とし込む際に、四つの観点から仕組みを作っていったと鈴木さんは説明します。

  • 観点A:育成スケジュール:全体像の見える化、属人化させない育成
  • 観点B:必要なスキルの見える化:上記の①、②、③の数値化
  • 観点C:効果測定:できる・できないがわかる客観的な評価
  • 観点D:動画の活用:試算表、決算書、法人税申告書などの作成

例えば観点Aに関しては、「3か月後にお客様を担当する」という目的に到達するために、1か月目、2か月目、3か月目にそれぞれ何を学ぶかといった育成スケジュールを作成しています。

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「この育成スケジュールを作成したことで、研修の目的や、できるようになってほしい到達点までの全体像が可視化され、現在地を把握しながら学べるようになりました。加えて、以前の課題だった教える人によって生じる内容や質のバラツキが解消されたことも、大きな効果の一つです」

新人研修のほかにも、全社員を対象とした研修(実務トレーニング試験、通称「実トレ試験」)を実施するなど、辻・本郷ではスタッフのスキルアップの機会を数多く用意していると言います。

「実トレ試験は各種税法や会社法、民法、事例、年末調整などの季節業務から実務に直結する問題を出し、調べる力も含めて社員のレベルアップを図るというもの。社内での順位や偏差値を示し、継続することで知識の底上げを目指しています。成績優秀者を表彰し、モチベーションアップにもつなげています」

必要なスキルの定義と育成スケジュールの設定

鈴木さんはセミナーの最後に「今日からできること」として、着手しやすく効果が大きい事柄を二つ挙げました。

  • 必要なスキルの定義:何ができるようになってほしいか、どこまでできるようになってほしいか
  • 育成スケジュールの設定:スキルを身につけるために何をいつまでに取り組ませるのか

「必要なスキルの定義については、高い理想を掲げるよりも『最低限ここまではできるようになってほしい』という控えめなもの、言い換えれば学ぶ側が到達できると思いやすいものにするのがポイントです。また育成スケジュールについては、新卒者や業界未経験者が全体像を把握しやすいように設定するとうまく行くと思います」

*     *     *

新卒者や業界未経験者は採用面接の場で、「人材育成制度はどうなっていますか?」と必ずと言っていいほど質問があると鈴木さんは話します。その意味でも、人材育成制度を整備することは、既存社員のスキルの底上げに効果的なだけでなく、採用においても大きなアドバンテージになることが期待できます。

辻・本郷は自社で実践している人材育成ノウハウをサービス化した教育・研修コンテンツ「NEXTA」を提供しています。興味のある方はこちらのバナーをクリックしてご覧ください。


Mikatusでは今後も、税理士の皆さんに役立つ情報をオンラインセミナーを通して発信していきますので、ぜひご期待ください。なおMikatusが過去に実施した「人材・採用・教育に関する実態調査」はこちらのWebページからダウンロードできます。


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