
税理士研修を公式ガイドラインに則って総解説!申請手続きの方法やQ&Aまとめ
税理士には年間36時間の研修を受講することが義務付けられていますが、多忙を極める税理士が研修の詳しい内容まで熟知するのは困難でしょう。そこで、ここでは日本税理士会連合会及び、その支部が発行しているガイドラインをもとに研修の内容を詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.税理士の研修受講義務について
- 1.1.研修の受講方法
- 1.2.受講時間に含めることができる研修内容
- 1.3.受講時間の算定方法
- 2.受講時間の申請方法
- 3.税理士研修を受けるうえで押さえておくべきポイント
- 3.1.申請の要否
- 3.2.「その他の研修」は18時間が限度
- 3.3.認定を受けていない研修の扱い
- 4.研修を免除されるケースについて
- 5.研修についてのQ&A
- 5.1.本や雑誌を読んでレポートを提出して受講時間を満たすことはできるか?
- 5.2.税理士同士の勉強会や事務所内の研修は受講時間として認められるか?
- 5.3.研修の講師・パネリストなどとして登壇した場合は受講時間として認められるか?
- 5.4.大学院で租税判例の講義を受けている場合は受講時間としてみとめられるか?
- 5.5.認定研修に該当する研修の具体例
- 5.6.研修を途中退席した場合の扱い
- 6.まとめ
税理士の研修受講義務について
税理士法39条の2では、「税理士は、所属税理士会及び日本税理士会連合会が行う研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。」と定められており、すべての税理士に年間36時間の研修受講が義務付けられています。
受講すべき研修は、連合会研修規則及び、税理士会研修細則にて、それぞれ以下の通り規定されています。
<連合会研修規則>
(1)全国統一研修会
(2)登録時研修
(3)公開研究討論会
(4)その他部、委員会及び特別委員会が企画する研修(以下「その他研修」という。)
(出展:連合会細則第2条(研修の種類))
<税理士会研修細則(準則)>
(1)本会が主催、共催又は後援する研修
(2)連合会が主催、共催又は後援する研修
(3)支部又は支部連絡協議会(支部等)が主催、共催又は後援する研修
(4)本会以外の税理士会(以下「他会」という。)又は税理士会員が所属する支部以外の支部等が主催、共催又は後援する研修で、受講しようとする税理士会員が、あらかじめ当該主催者の承諾を得たもの
(5)○○税理士協同組合、公益財団法人日本税務研究センタ-その他本会及び連合会に関連する団体(以下「関連団体」という。)が主催、共催又は後援する研修
(6)本会が認定した研修(以下「認定研修」という。)
(7)前各号のほか、本会が必要と認めた研修(以下「その他の研修」という。)
(出典:税理士会研修細則第2条(研修の種類))
研修の受講方法
研修の受講方法には、会場に直接参加して受講する方法と、インターネットやDVDなどのマルチメディアを利用して受講する方法があり、研修ごとに利用できる受講方法が異なります。
研修に参加を希望する際は、所属する税理士会に問い合わせることになっています。
受講時間に含めることができる研修内容
受講時間に含めることができる研修科目についても規定があり、研修内容が以下のいずれかに該当する必要があります。
(1)税理士法その他職業倫理に関するもの
(2)租税法及び会計に関するもの
(3)公益的業務に関するもの
(4)情報処理に関するもの
(5)法律、経済、経営
(出典:日本税理士会連合会規研修則第4条(研修の科目))
なお、「(1)税理士法その他職業倫理に関するもの」については、具体的には、税理士法、連合会会則、標準会則、支部規則、その他綱紀規則等が該当するとされています。
受講時間の算定方法
受講時間の算定方法は以下の通りです。
(1)会場参加方式により受講したときは、その研修時間を受講時間とする。
(2)細則第2条第1項第1号から第5号までに規定する研修についてマルチメディアを利用する方式により受講したときは、当該会員からの申請により視聴した時間(配信時間)を受講時間とする。
(出典:日本税理士会連合会研修部 研修規則Q&A)
研修受講義務を達成できなかった場合のペナルティ
研修義務を達成できなかった場合は、日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」で税理士の氏名等の情報が公開されます。
受講時間の申請方法
マルチメディア研修を除く研修に参加した場合は、会場にて主催者が出席者の受講記録を申請するため、申請は不要です。
マルチメディア研修を視聴した場合は、視聴中に表示される「研修確認コード」を研修受講管理システムに入力し、各自で登録することになります。研修受講管理システムには、所属する税理士会のホームページからログインすることができます。
なお、受講管理システムでは、現在の自分の受講時間を確認することもできます。ただし、内容が反映されるまでには一週間から一カ月程度かかるため、注意しましょう。
税理士研修を受けるうえで押さえておくべきポイント
税理士が研修を受講するうえで押さえておくべきポイントを解説します。
申請の要否
税理士研修では、受講時間の申請が必要なものとそうでないものが混在しています。大まかに言えば、以下のように押さえておきましょう。
<申請が必要なケース>
・会員が独自に参加した研修のうち、「その他の研修」に該当する場合
→研修会の講師等を務めた場合や税理士同士の勉強会を含む
・支部からDVD等を借りて視聴した場合
<申請が不要なケース>
・会場に直接参加して研修を受講した場合
・研修サイトから動画を視聴した場合
→受講管理システムから受講管理の申請を行う
<h3>事業年度の途中で新規会員登録をした場合の扱い
事業年度の途中で新規登録をした場合は、受講義務時間を翌月から月数按分して算定することになっています。例えば、7月に会員登録をした場合は、
36時間÷12か月×8か月
となり、24時間が受講義務時間となります。
「その他の研修」は18時間が限度
「その他の研修」として認められるのは、一事業年度に18時間が限度となります。なお、事業年度の途中で新規登録をした会員については、算定制限である18時間についても月数按分されるため、例えば、7月に会員登録をした場合は、12時間が上限となる点に注意しましょう。
認定を受けていない研修の扱い
認定研修以外の研修については、「その他の研修」に該当するか否かが認定研修審査会によって審議されることになります。申請を希望する場合は、研修を受講した日の翌月15日までに「受講時間認定申請書(その他の研修)」を提出する必要があります。
(1)大学等及び民間団体が実施する研修で、本会の認定を受けていないもの
※主に税理士会員を受講対象とする研修に限る。
(2)日本弁護士連合会、日本公認会計士協会その他法律で定める士業団体が実施する研修(税理士業務に隣接するものに限る。)
(3)他の税理士会が認めた研修
(出展:日本税理士会連合会研修部 研修規則Q&A)
研修を免除されるケースについて
以下、いずれかに該当する場合は、受講義務が免除されます。
申請を希望する際は、「研修受講義務免除申請書(第1号様式)」および、「免除事由を証明する書類」を所属する税理士会に提出する必要があります。申請書は各税理士会のホームページから印刷できます。
なお、事由によっては、合わせて申述書の提出を求められることもあります。
① 負傷又は疾病により療養している場合
② 震災、風水害、火災などの災害にあった場合
③ 税理士法第43条後段に規定する報酬のある公職に就いている場合
④ 国会議員又は地方公共団体の議会の議員である場合
⑤ 出産、育児、介護などによる場合
(出展:日本税理士会連合会研修部 研修規則Q&A)
研修についてのQ&A
ここでは研修についてのよくあるQ&Aを解説します。
なお、下記以外の質問については、以下を参考にしてください。
本や雑誌を読んでレポートを提出して受講時間を満たすことはできるか?
原則として受講時間とは認められません。
ただし、日本税務研究センターの発行している雑誌等の内容に関するレポートを提出し、審査委員会の認定を受ければ、最大24時間の研修受講認定を受けることができます。
税理士同士の勉強会や事務所内の研修は受講時間として認められるか?
税理士団体が実施する研修のうち、会員が20名以上出席し、研修会規則第4条に規定する研修の科目については、「その他の研修」として受講時間に参入することができます。
申請を希望する場合は、研修会を実施した税理士団体が出席者全員分を取りまとめて申請を行います。
研修の講師・パネリストなどとして登壇した場合は受講時間として認められるか?
細則第2条第1項第1号から第6号まで及び細則第5条に規定する研修の講師講師(パネリスト、研究発表者等も含む)を務めた場合は、「受講時間認定申請書(その他の研修)」を申請することで、当該研修時間の3倍の時間を「その他の研修」として受講時間に算入することができます。
対象となるのは、会員研修会や認定研修が主になりますが、研修の内容によっては、それ以外の研修会でも認められることがあります。
ただし、一般納税者や経理担当者を受講対象者とする研修の講師については対象とならない点には注意しましょう。
大学院で租税判例の講義を受けている場合は受講時間としてみとめられるか?
「(4)情報処理に関するもの」に該当するため、受講時間に算入することができます。
この場合は、税理士会の認定研修審査会から主催者が認定を受けている場合は「認定研修」という扱いとなり、認定を受けていない場合は、会員の申請に基づき、「その他の研修」として算入することになります。
認定研修に該当する研修の具体例
認定研修に該当するのは、税理士会の認定研修審議会で審議を受け、認定されたものとなります。以下のようなものが該当します。
(1)大学、公的機関又は税務関連学会(以下「大学等」という。)が実施する研修
(2)大学等以外の民間の企業又は団体等(以下「民間団体」という。)が実施する研修
(3)前記民間団体のうち一定の要件を備えた「認定団体」が実施する研修
(出展:日本税理士会連合会研修部 研修規則Q&A)
研修を途中退席した場合の扱い
研修を途中退席した場合は、途中退席した時点までの時間が受講時間として認められます。
まとめ
税理士は年間に36時間の研修を受講することが義務として課せられています。達成できなかった場合は、日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」にて、氏名等が公表されるため、特別な理由がない限り、達成するようにしましょう。
また、対象となる研修には細かな規定があり、種類によっては、会員自らが受講時間を申請しなければならないものもあります。なかには、翌月の15日までに申請しなければ無効となってしまうものもあるため、注意しましょう。