
企業会計しか知らない顧問先が税務会計でつまずいてしまう3パターン
簿記の知識が逆に理解を妨げている皮肉
顧問先から法人税の問い合わせに対応しているときに、いまいち理解してもらえないと思う場面に遭遇することがよくあります。
一般的に経理担当者は簿記の知識を大なり小なり持ち合わせていますが、そのことが却って税務会計を理解する妨げになっているのです。
あなたが具体的に説明しようと思ったとしても、概念を理解するという前提が欠けているのであれば、いくら説明しても理解することができません。
既に理解してしまっている税理士という立場になってしまうと、概念そのものを一般知識に置き換えずに説明することが多くなります。そこで、簿記しか知らない人が税務会計を理解するのにどのような場面でつまずいてしまうのか及びそれに対する対処法をご紹介したいと思います。
言語の違いから理解する気が失せてしまう
企業会計では売上や収益、費用という科目で仕訳をきりますが、税務会計では益金と損金というように概念としてはほぼ同じであるのに呼び名が変わってしまうだけで理解する気力が削がれてしまうことがあります。
自分の知っている知識で対応できそうだな…と思える勝負なら誰でもやってみようかなと感じることができますが、始めから「益金/損金」と言われてしまうと、これは無理だ…と意気消沈してしまうのです。
そこで説明する単語を簿記用語に置き換える作業が必要になります。たとえば益金不算入項目といった名称を持ち出すのではなく、財務会計上の売上は税務会計になると税金がかかる売上(益金算入項目)と節税できる売上(益金不算入項目)の2種類があると説明するのです。このようにすることによって理解するためのハードルが一気に低くなり、簿記の知識だけで対応できそうだと自信を持つことができるのです。
なにそれ全然理解できない…売上減らすの?
わかりやすく説明しようとするあまり、オーバーな表現になると余計に混乱しがちです。たとえば「売上を減らせば税金を安く抑えることができる」という表現です。粉飾決算で架空の売上を計上している企業が紙面を賑わせている一方で、売上を減らすという概念がいいのか悪いのかわからなくなってしまうのです。
財務会計は「借方貸方の概念」と「貸借科目と損益科目の違い」の2つを頭に入れさえすれば、ざっくりと理解することができます。それと同じように税務会計も繰越欠損金の考え方や売上の計上時期をずらす発生主義の概念が理解できれば、売上計上金額を減らす益金不算入項目や損金算入項目をすんなり理解することができます。
もちろんここでも繰越欠損金は赤字と言い換えるといった工夫が必要になります。
意外と説明し忘れている!設定ゴールの違い
企業会計は貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を作成し企業の成績表として公にすることが目的ですが、税務会計は法人税を計算し納付することが最終目的となります。
この最終ゴールを見誤ると、最後まで理解することが困難になります。企業会計は事業活動の数値化、税務会計は法人税額の計算するという違いを説明しなかったばかりに、自分はいま何を理解しようとしているのかがわからなくなってしまうことになります。
逆に税務会計の目的を説明しただけで、いままで理解できなかったことがすべて腑に落ちるということもあります。
1つの事象を奥深く説明するよりも、全体を俯瞰してから説明することで、少ない言葉で効率よく理解してもらうことが可能となるのです。
企業会計(財務会計と管理会計)と税務会計は、簿記さえできればすべてできると勘違いされがちです。簿記はすべての会計に通じる知識を含有していますが、簿記の知識だけでは節税対策を講じることはできません。堅実で無駄遣いは一切したくないと思う経営者ならば、税務会計の面白さが理解できるかもしれません。
企業会計しか知らない顧問先が税務会計でつまずいてしまう3パターン
1.売上は益金、費用は損金。言語の違いにいきなり圧倒されてしまう。
2.売上を減らす=課税金額を減少させる=納税額を抑えるという図式が理解できない
3.何のために税務会計が存在するのかがいまいちわかっていない