
税理士試験に合格するまでの勉強時間は?科目選びから合格のコツを解説!
複数年かけて受験することが前提の税理士試験では、計画性や戦略性が欠かせません。そこでこの記事では、税理士試験の学習計画を立てるうえで不可欠な科目ごとの勉強時間の目安や注意点、働きながら学習時間を捻出するコツについて解説します。
目次[非表示]
- 1.試験合格に必要な科目別の勉強時間の目安
- 2.税理士試験の実施概要
- 3.税理士試験の合否を分けるのは計画性
- 3.1.一年で全科目に合格するのは困難
- 3.2.一年の学習計画を初めにしっかりと練る
- 3.3.大学院を活用するのも手
- 4.科目選択に注意すべき3つのポイント
- 4.1.科目ごとに合格難易度は異なる
- 4.2.選択必須科目はどちらか一つにしておくのが無難
- 4.3.一部科目の組み合わせは不可
- 5.社会人が働きながら勉強時間を捻出するコツ
- 6.新型コロナウイルスに伴う注意点
- 6.1.マスクの着用が必須に
- 6.2.風邪などの症状が出ている場合は受験不可に
- 7.税理士試験に実際に受かった人の体験談
- 8.まとめ
試験合格に必要な科目別の勉強時間の目安
科目 |
時間 |
簿記論 |
450 |
財務諸表論 |
450 |
所得税法 |
600 |
法人税法 |
600 |
相続税法 |
450 |
消費税法 |
300 |
酒税法 |
150 |
国税徴収法 |
150 |
住民税 |
200 |
事業税 |
200 |
固定資産税 |
250 |
出典 スタディング
税理士資格を取得するためには、必須科目から二科目、選択必須科目と選択科目から三科目を選び、合計で五科目に合格する必要があります。
国税庁のホームページでは税理士試験の合格基準点は各科目とも満点の60%と公表されていますが、採点には相対評価が採用されているとも言われており、実際の合格基準点は会計科目で50~60%、税法科目で65~75%前後とされています。科目ごとの合格率は例年10~15%前後となっており、合格のためには高い得点を取ることが求められます。
税理士試験の実施概要
税理士試験は税理士となるために必要な学識および応用能力を有するかを判定するためのものです。試験は毎年4月上旬に国税庁のホームページで告知され、8月上旬に3日間かけて行われます。合格者は12月中旬に官報に氏名などを掲載する形で発表されます。
税理士試験は、以下のいずれかの条件を満たせば受験することができます。
学識による受験資格 |
大学・短大・高等専門学校のいずれかを卒業した者で、法律学または経済学を1科目以上履修した者 |
大学3年生以上で法律学または経済学を1科目以上含む62単位以上取得した者 | |
一定の専修学校の専門課程を修了し、法律学または経済学を1科目以上履修した者 | |
司法試験合格者 | |
公認会計士の短答式試験に合格した者 | |
資格による受験資格 |
日商簿記検定1級合格者 |
全経簿記検定上級合格者 | |
職歴による受験資格 |
法人または個人の会計に関する事務に2年以上従事した者 |
銀行・信託会社・保険会社などで資金の貸付・運用に2年以上従事した者 | |
税理士・弁護士・公認会計士などの業務の補助事務に2年以上従事した者 |
税理士試験の合否を分けるのは計画性
税理士試験は複数年かけて合格することが前提の試験であるため、計画的に勉強を進めていくことが求められます。ここでは、計画を練るうえで知っておきたい点について解説していきます。
一年で全科目に合格するのは困難
税理士試験は複数年かけて合格することが前提となるため、各科目の難易度が高めに設定されています。当然、勉強時間もかなりの時間が必要となるため、一年で全科目に合格することは現実的ではありません。
例えば、簿記論と財務諸表論の二科目に絞って考えてみても、合格するためには、目安として920時間程度の勉強が必要とされています。これだけの時間を一年間で確保するためには、一日2~3時間程度を毎日確保しなければいけません。
全科目に合格するためにはさらに倍近くの時間を確保しなければいけないことを考えれば、一年で全科目に合格するのは現実的ではないと言えます。
一年の学習計画を初めにしっかりと練る
税理士試験の学習計画を練る際は、初めに一年間の学習計画をしっかりと練っておく必要があります。計画を立てる際に、特に注意しなければいけないのが勉強する科目の順番や組み合わせです。
税理士試験では各科目は完全に独立しているわけではなく、一つの科目が別の科目を理解するための土台となっています。例えば、簿記論では企業の日々の活動から帳簿を記録する方法を学ぶのに対し、財務諸表論ではそれらの記録をもとに財務諸表を作成する方法について学んでいきます。
これら二つの科目はそれぞれがお互いの科目を理解するための土台になっているだけでなく、二つ合わせてさらに別の科目を理解するための土台にもなっています。学習計画を練る際は、こうした科目ごとのつながりを初めに押さえ、最適な組み合わせを考えてから勉強を始めるようにしましょう。
大学院を活用するのも手
大学院で会計または税法に関する修士論文を書いて国税審議会の認定を受ければ、一部の科目が免除されます。修士論文を書き上げることも楽な道ではありませんが、試験につまずいて何年も無駄にするよりは、確実な方法として人気のある選択肢です。税理士試験を受験する際は、コツコツとした勉強以外にも大学院を活用する方法があることを覚えておきましょう。
科目選択に注意すべき3つのポイント
税理士試験の科目選択は合否を分ける重要なポイントです。ここでは科目選択時に陥りがちな3つの注意点について解説していきます。
科目ごとに合格難易度は異なる
税理士試験で選択できる各科目の難易度は一律ではなく、出題形式や出題範囲にもばらつきがあります。当然、合格率にも差があるため、科目選択の際は注意しましょう。令和二年度の合格率は以下のとおりです。
科目 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率(%) |
簿記論 |
10,757 |
2,429 |
22.6 |
財務諸表論 |
8,568 |
1,630 |
19.0 |
所得税法 |
1,437 |
173 |
12.0 |
法人税法 |
3,658 |
588 |
16.1 |
相続税法 |
2,499 |
264 |
10.6 |
消費税法 |
6,261 |
782 |
12.5 |
酒税法 |
446 |
62 |
13.9 |
国税徴収法 |
1,629 |
198 |
12.2 |
住民税 |
381 |
69 |
18.1 |
事業税 |
335 |
44 |
13.1 |
固定資産税 |
874 |
118 |
13.5 |
出典 MS Agent
税理士試験では、難易度の違いを考慮して受かりやすい科目を中心に受験していくこともできますが、簡単な科目ばかりを選んでしまうと、実務で評価されにくくなってしまうとも言われています。また、科目ごとに教材の揃えやすさにも差があり、受験者数が少ない科目では、書店でテキストを入手できないこともあるため、オークションサイトなどを活用する必要があります。
選択必須科目はどちらか一つにしておくのが無難
選択必須科目である所得税法と法人税法はどちらか一科目を選択すればよいことになっており、両方を選択する必要はありません。ただし、所得税法と法人税法の両方を選択できないということではなく、希望すれば、両方の科目を選択することも可能です。選択必須科目は受験者数が多い関係上、合格のハードルも高めに設定されていると言われています。受験する際はしっかりとした対策が求められることを押さえておきましょう。
一部科目の組み合わせは不可
消費税法と酒税法、住民税と事業税はそれぞれいずれか一科目しか選択できないことになっています。どちらかの科目合格後には、もう一方の科目は選択できなくなるので、注意しましょう。
社会人が働きながら勉強時間を捻出するコツ
税理士試験の勉強をするうえで課題となるのは、勉強時間の確保とモチベーションの維持です。特に社会人の場合は、一日中机に向かって勉強できる時間があまりないため、こまめに時間を確保していくことが重要になります。
そこで、お勧めなのが自分の勉強した時間をエクセルやアプリで記録していく方法です。時間を記録しておくことで通勤や昼休みのわずかな時間でも勉強に意識を向けやすくなり、毎日欠かさず捻出できれば、年単位で見たときにかなりの時間を捻出することができます。勉強時間を後から見返せば、自分の成長を実感することもでき、モチベーションの維持にも役立つでしょう。時間を確保しづらい社会人は、積極的に時間を確保していくための工夫を取り入れていくことが大切です。
新型コロナウイルスに伴う注意点
新型コロナウイルスの流行に伴い、税理士試験でも新たにいくつかのルールが設けられています。国税庁では状況の変化に伴い、さらなる対応を取ることが告知されているので、国税庁のホームページを定期的に確認するようにしましょう。ここでは令和3年6月時点での注意事項をもとに解説していきます。
マスクの着用が必須に
試験会場では他の受験者や係員の安全確保のためにマスクの着用が義務付けられています。マスクを着用していなかったり、口と鼻を正しく覆っていない場合にもは受験を拒否される可能性があるので、注意しましょう。念のため、予備のマスクを準備しておくことも大切です。
風邪などの症状が出ている場合は受験不可に
新型コロナウイルスの流行に伴い、以下の項目に該当する場合は、受験を拒否されます。
- 感染症に罹患し、治療していない者
- 息苦しさや強い倦怠感、咳、37.5度以上の発熱など風邪症状のいずれかがある者
- 感染者と接触があり、医師または保健所などの指示で自宅等待機となっている者
- 試験日前14日以内に海外から帰国または入国した者
上記の項目以外にも試験会場では注意事項が定められています。これらの注意事項や係員からの指示に従わなかった場合にも受験資格が停止される可能性があることに注意しましょう。万一、受験できなかった場合には受験料の返金や追試験の実施などの措置は講じられないことになっています。
税理士試験に実際に受かった人の体験談
Q.税理士試験で選択した科目を教えてください。
簿記論、財務諸表論の他に、法人税、消費税、固定資産税を選択しました。
Q,それぞれの科目を選択した理由を教えてください。
簿記と財務諸表論は必須なので割愛しますが、法人税と消費税は実務で使う機会が多いので選択しました。固定資産税については早く受かりたかったから選択したのが正直なところです。
Q.合格までにかかった勉強時間はどのくらいですか?
合計で十年くらいです。大学四年のときに資格の学校に通い始めて簿記と財務諸表論は一年で取得しました。その後、法人税、固定資産税、消費税を受験する形を取っていましたが、法人税がなかなか通らず先に固定資産税に合格しました。その後は法人税を後回しにして消費税の勉強を進め、2年くらいで合格。最後の科目になった法人税に時間がかかりました。法人税という重い科目を最後に残したのは失敗だったと思います。
Q.当時は勉強のみに専念されていたのでしょうか?
初めの一年は勉強に専念していました。自習室で毎日朝から晩まで12時間くらい勉強していたと思います。そこで簿記と財務諸表論を取れたのを機に、仕出し弁当のアルバイトを始めて二年くらいアルバイトをしながら勉強をしました。最後の二科目は税理士事務所に就職して実務経験を積みながら取得しました。
まとめ
税理士試験合格までに必要な勉強時間の目安は、選択する科目の組み合わせによって異なります。合格のためには自分に合った科目を選択することが欠かせませんが、どの科目を選ぶ場合でも、初めに学習計画をしっかりと練り、着実に勉強を進めていくことが不可欠です。
また、2020年からは新型コロナウイルスの流行に伴い、新たなルールが設けられています。ルールは今後も随時、変更・追加されていくことが告知されているので、試験を受験する際は、事前に確認するようにしましょう。
参考記事