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税理士が副業をする際に注意すべき就業規則は?直接受任時の注意点も解説

就業規則は職場によって内容が異なり、ときには就業規則そのものがないことも珍しくないため、どんな点に注意して副業をすればよいのか分からないという税理士も多いでしょう。ここでは、税理士が副業をする際に注意すべき点を解説します。

目次[非表示]

  1. 1.そもそも税理士は副業をしてもよい?
  2. 2.副業をする際は就業規則に注意
    1. 2.1.競業避止義務
    2. 2.2.誠実義務
  3. 3.就業規則が設けられていない場合の扱い
  4. 4.直接受任をする際の注意点
    1. 4.1.事前に所属する事務所からの承諾を得ること
      1. 4.1.1.税理士業務に付随する業務の場合も承諾が必要になる
    2. 4.2.契約時には説明書面も用意すること
    3. 4.3.毎年税理士会への届け出を行うこと
  5. 5.まとめ


そもそも税理士は副業をしてもよい?

ここでは、平成30年1月に厚生労働省が策定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」をもとに解説をしていきます。

まず、裁判所では会社の職場秩序に影響せず、労務提供に影響が出ない範囲であれば、副業・兼職は認められるとしています。

裁判例では、就業時間外の時間をどのように過ごすのかは、基本的には従業員の自由であるとされており、就業規則で副業を禁止できるのは、以下のような場合に限られるとしています。

  • 副業をすることが労務提供の妨げとなる場合
  • 企業上の秘密が漏洩する場合
  • 企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
  • 競業により企業の利益を害する場合

(出典 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)

ただし、解雇できないとはいっても、副業をすることが職場の風紀を乱す行為であると経営者に判断されるリスクはあります。人事評価などの面で不当な扱いを受けることがないとも言い切れないため、できるだけ就業規則を尊重する姿勢は見せるようにするのが望ましいでしょう。

また、副業が企業の秩序を乱したり、労働者による労務の提供に支障をきたしたりする場合などは解雇の対象となることがあります。

過去の裁判では、深夜0時まで副業をしていたことが労務提供に支障をきたすとした理由で解雇が認められたケースもあるため、本業への影響を十分に考慮するようにしましょう。

副業をする際は就業規則に注意

副業をする際は、その副業が就業規則に抵触していないかをよく確認しておく必要があります。

就業規則は、解釈の幅を持たせるために記述をあいまいにしているものが多いと言われています。

過去の裁判では、その行為が就業規則に記載された懲戒事由に該当するか否かを判断する場合、就業規則に記載された文言を限定的に解釈して適用する傾向にあるとされており、実際にどのような行動が処分の対象となるかは職場によって差があります。

ここでは特に注意が必要な競業避止義務と誠実義務について解説します。

競業避止義務

労働者はその会社に在籍する間、使用者と競合する業務を行わない義務を負っています。これを競業避止義務と言い、違反した場合には、退職金の減額や損害賠償の請求といった処罰を設けている事務所もあります。

具体的に対象となる業務の範囲については、競業避止義務について記載された書類を確認する必要があります。事務所によっては、競業避止義務の規定を就業規則に設けている場合と、誓約書に設けている場合があるため、両方の記述を確認するようにしましょう。

また、競業避止義務の対象となるのは、企業の営業秘密に限定されていないことにも注意が必要です。

経済産業省が公表した、「平成24年度 人材を通じた技術流出に関する調査研究」の参考資料5「競業避止義務契約の有効性について」によれば、営業方法や指導方法などに係る独自のノウハウについても守るべき企業側の利益があると判断されやすい傾向にあるとしています。副業をする際は、これらの情報についても漏洩しないように注意しましょう。

誠実義務

労働者には、使用者の名誉・信用を棄損しないといった、誠実に行動する義務が課せられています。こちらも具体的にどのような事柄が対象となるかは就業規則を確認する必要がありますが、犯罪行為への参加はもちろん、社会的相当性を逸脱した引き抜きや反社会的勢力に関連する企業での副業なども誠実義務違反となることがあります。

就業規則が設けられていない場合の扱い

労働基準法第89条第1項によれば、就業規則は常時10人以上の労働者を雇用する場合に作成が義務付けられているものです。

そのため、事務所によっては、そもそも就業規則がないというところも珍しくないでしょう。

就業規則がない場合は、副業をしていることそのものが理由で懲戒処分をされることはありません。ただし、守秘義務や、競業避止義務に違反した場合は、処分を受けることがあります。

直接受任をする際の注意点

副業を検討する際は、税理士としての専門性を活かせる、直接受任を利用したいとお考えの方もいるでしょう。

直接受任とは、所属税理士が、使用者から書面による承諾を得ることにより、自らが委嘱を受けて業務を行うことができる制度です。

ここでは直接受任を行ううえで注意するべき点について解説します。

事前に所属する事務所からの承諾を得ること

直接受任をする際は、所属する税理士事務所または税理士法人から書面で承諾を得ることが必要になります。事後承諾や口頭での承諾は認められず、契約の際にも承諾書の写しが必要になるため、必ず事前に承諾を得るようにしましょう。

税理士業務に付随する業務の場合も承諾が必要になる

承諾が必要となる業務の範囲は、税理士法第2条第1項1号から第3号までに規定する業務と、同条第2項に規定する業務と定められています。

税理士業務に付随する財務書類の作成や、会計帳簿の記帳代行の受注にも承諾が必要となる点に注意しましょう。

契約時には説明書面も用意すること

契約の際には、承諾書に加えて、契約者が所属税理士であることなどを記載した説明書面も必要になります。こちらも口頭での説明は認められておらず、必ず書面で説明することが必要になります。

また、説明書面には所属税理士の署名と押印も必要になるため、詳しくは日本税理士会連合会の「所属税理士制度(税理士法施行規則第1条の2)に関するQ&Aの策定について」を確認しましょう。リンク先では、承諾書や説明書のフォーマットも掲載されています。

毎年税理士会への届け出を行うこと

所属税理士は「所属税理士の直接受任業務に関する報告書」に基づき、毎年4月までに3月31日時点での直接受任業務の状況を税理士会に報告することが義務付けられています。未提出の場合は、勤務先に連絡が入ることもあるため、必ず申告をするようにしましょう。

まとめ

副業は、職業選択の自由に関わる問題であるため、税理士であっても全面的に禁止されることはありません。

ただし、副業をすることが労務提供に支障をきたす場合や、副業の内容が会社や使用者の信用を失墜する内容である場合は、懲戒処分の対象になることがあります。誠実義務や競業避止義務にも十分注意するようにしましょう。

直接受任をする際は、勤務先の事務所に事前承諾を得ること、契約時に自らが所属税理士であることなどを記載した説明書面を渡すことなどが必要になります。記帳代行のみを請け負う場合でも承諾が必要になるため、忘れないように注意しましょう。


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