セミナーレポート「会計事務所だからできる!中小企業の資金繰り支援」
こんにちは。Mikatus(ミカタス)株式会社の八鍬(やくわ)です。
多くの税理士は今、岐路に立たされています。税理士の数は増加傾向にある一方で、その顧問先である中小企業の数は減り続けています。また、AI(人工知能)の普及により、記帳代行や税務申告といった業務は代替されていくことが予想されています。
これからの時代を生き抜くために、税理士は資金繰りをはじめとする企業の財務面や経営面を支援していく必要があります。では資金繰り支援を行ううえで、どんなことが重要になるのでしょうか。
その答えを考察すべくMikatus株式会社とH.I.F.株式会社は5月13日(木)、共同でオンラインセミナーを開催しました。本記事ではその模様をリポートします。
■開催日時
2021/5/13 16:00~17:00
■セミナータイトル
「会計事務所だからできる!中小企業の資金繰り支援」■登壇者
・Mikatus株式会社 マーケティンググループ マネジャー 岩原 巧
・H.I.F.株式会社 エグゼクティブマネージャー 大久保 亮佑
(敬称略)
会計事務所が資金繰りを支援すべき理由
3部構成で行われたセミナーの第1部と第2部では、Mikatus株式会社より、税理士を取り巻く環境の変化や、資金繰りを支援するうえで必要なことなどが紹介されました。
続く第3部では、H.I.F.株式会社の大久保亮佑氏より、キャッシュフローを改善するための施策についての説明がありました。
まず「なぜ会計事務所は中小企業の資金繰りサービスを提供すべきなのか」と題した第1部の冒頭では、日本税理士会連合会の調査による税理士の顧問料の推移が示されました。
それによると3万円以下の顧問料の割合(1万円以下も含む)は、1994年の時点で全体の41.8%でしたが、2014年の時点では60.2%に増加しています。つまり税理士の顧問料の低価格化が進んでいるのです。
この背景には、冒頭で述べた税理士数の増加と中小企業数の減少による競争の激化や、AIの普及などがあると考えられます。
またMikatusが全国の中小企業に対して行った税理士への不満を聞いたアンケートでは、厳しい声が寄せられました。
ここでは代表的な意見をご紹介します。
「先月の数字をただ読み上げるだけ。だから何?と感じる。数字の変化の要因や、何をすべきかを一緒に考えてほしい」(サービス業)
「会計の入力や税金の計算はそのうち自動化できると思っている。印鑑をつくだけの仕事にお金を払いたいと思わない」(印刷業)
逆に税理士に対して期待や感謝していることとしては、次のような声が聞かれました。
「夜間の営業を開始して成功したのは税理士のおかげ。客数や客単価といった数字をもとにアドバイスしてくれた」(飲食業[カフェ])
「自分は売上拡大のことしか考えない。支出や資金繰りを見てくれて、リスク管理をしてくれるとうれしい」(飲食業[カフェ])
こうした点からも、財務や経営について相談したい経営者がいることがわかります。また、売上のことにしか気が回っていない経営者も少なくなく、資金繰りに関するアドバイスを受けたいというニーズがあることも見て取れます。
「正しく税金を計算して適切な納税をサポートしたい」という思いだけでは、資金繰りや経営面の支援を受けたい中小企業との間で生じるギャップを埋めることはできません。
その垣根を超えるうえで、会計事務所には強みとなる3つのポイントがあるとMikatusは考えています。
①経営者と長期的な関係性を築ける
②お金に関する情報を把握できる
③経営者の相談相手になれる
記帳代行や税務申告といった業務はAIによって代替される可能性が高く、会計事務所はより付加価値の高いサービスを提供することで価格競争から脱却しなければなりません。
そのために①、②、③という本来の強みを発揮し、中小企業の資金繰り支援に乗り出すことが求められているのです。
資金繰り支援の必要性と具体策
「資金繰り支援を行うために必要なこと」と題した第2部では、引き続きMikatusより説明がありました。
まず会計事務所が身につけるべき3つの要素として、以下のものを挙げました。
①知識
キャッシュフローや資金繰りを改善するためのソリューションに関する知識を指します。
②サービスの型
サービスを提供するプロセスをパッケージ化し、会社ごとにカスタマイズして適用することを意味します。
③マインド
第1部で紹介された顧問先との間にあるギャップを解消するためにマインドを改革することを指します。つまりこれまでと同じ税務顧問としてではなく、顧問先の財務や経営を支えるよう心構えを切り替えていくことが求められるのです。
今回のセミナーでは、このうちの②サービスの型について特に詳しい説明がありました。サービスの型を考える際には、3つのステップを踏む必要があります。
[Step1]顧問先の現状・実績を見える化する
[Step2]経営者と議論することで予測の精度を上げる
[Step3]予実をしっかりと確認していき、リスクがあれば改善策を議論する
具体的には、Excelで作成したオリジナルの資金繰り表を用い、これらのステップを実践している税理士の事例が示されました。
さらにサービスの型の一例として、Mikatusが提供する「キャッシュ・イズ・キング」についても、デモンストレーションを交えた説明がありました。
キャッシュ・イズ・キングは過去2年分の会計データをもとに1年先までの資金繰りを予測するツール。これを使えばExcelなどで資金繰り表を自作しなくても、高精度な未来予測を行うことができます。
例えば1年後に資金がショートすることが見込まれるケースでは、ツール上で原価率や賃料、人件費などを調整することで、将来の数値をボタンひとつでシミュレーションすることが可能です。
この結果をもとに経営者とコミュニケーションを取ることで、売上などを含む資金繰りの予測を精緻なものにしていくのです。
キャッシュフローを改善するために
最後に「顧問先のキャッシュフロー改善施策と事前予防策」と題した第3部の内容をご紹介します。
キャッシュ・イズ・キングは未来を予測して打ち手を検討するためのツールであり、打ち手の実行、すなわち資金繰りを改善するための施策の実行まではサポートしません。
第3部に登壇した大久保氏が所属するH.I.F.では、キャッシュフローを改善するための施策を講じるプロセスを支援しています。
大久保氏によると、企業のキャッシュフローを改善するうえでポイントとなるのは3つ。
①CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の改善
②債権回収の徹底
③与信管理の徹底
この3点を支援するのがH.I.F.の主業務であり、具体的には取引先に対する与信調査から請求書発行、売掛金の早期支払い、督促・催促、代金回収までを代行します。
大久保氏は、鉄筋の加工・組み立てなどを手がける会社がH.I.F.の支援を受けてキャッシュフローを大幅に改善させた事例を紹介し、中小企業にとっての同社の優位性を強調しました。
H.I.F.のサービスにご興味のある方は問い合わせフォームからお問い合わせください。
以上、ここではH.I.F.とMikatusの共催によるオンラインセミナーの模様をリポートしました。
A-SaaS Clipでは会計事務所のお役立ち情報をお届けしますので、引き続きどうぞご期待ください。