
【セミナーレポート】記帳業務の8割を削減!自動仕訳の導入の勘所とは?
こんにちは。Mikatus(ミカタス)株式会社の八鍬(やくわ)です。
Mikatusは10月14日、「今さら聞けない自動仕訳の活用方法」と題したオンラインセミナーを開催しました。自動仕訳は、これまで手作業が必要とされてきた仕訳および記帳を自動化するもので、多くの会計システムに実装されています。
これを導入することで税務を効率化し、捻出した時間を付加価値の高い業務に振り向けることが可能になります。ここでは自動仕訳の仕組みや、導入するに当たってのポイントなどが示されたセミナーの内容を、登壇した西嶋勇太と岩原巧に振り返ってもらいました。
会計事務所に業務効率化が求められる理由
――税理士同士の競争が激化していると聞きます。
西嶋:日本国内の企業数は、1999年の約480万社から2016年の約360万社まで減少の一途を辿っています。実に4分の1の企業が消失しているのです。一方、税理士の数は増加傾向が続いており、この20年で約1万人の税理士が増えた計算になります。多くの税理士が少ないパイを奪い合う時代になっているのです。
――AI(人工知能)が税理士の仕事を代替していくという話もあります。
西嶋:AIの発達により、税務申告や記帳代行といった税理士の従来業務が代替されると言われており、税理士の存在意義が問われています。この傾向は税理士の顧問料にも反映されており、月額3万円未満という低価格帯の顧問契約の割合が増えてきています。
――税理士業界にもコロナ禍の影響はあるのでしょうか?
西嶋:コロナ禍の影響を受けて「税理士の"本当の姿"が見えてきた」と指摘する声があります。なぜなら経営者の多くは今、資金繰りに苦しんでおり、最も身近な相談相手として税理士にサポートしてもらいたいにもかかわらず、こうした相談に苦手意識を持つ税理士が少なくないからです。「果たして自社の顧問税理士は資金繰りについて相談に乗ってくれるのか」と、経営者は税理士に対してシビアな目を向けているのです。
自動仕訳を支えるアカウントアグリゲーションとは
――自動仕訳やアカウントアグリゲーションとは何でしょうか?
西嶋:税理士には今、従来からの税務顧問としての業務を効率化し、より付加価値の高いサービスを提供することが求められています。その業務効率化を支えるものの一つとして、自動仕訳が注目されているのです。
自動仕訳とは、クレジットカードやインターネットバンキングなどの取引明細を取り込み、仕訳に変換する機能のことを言います。会計サービスとの連携が自動で行われるため、入力にかかる時間やミスを削減できます。
この仕組みは、複数の口座情報を一元管理するアカウントアグリゲーションという技術に支えられています。そしてこのアカウントアグリゲーションに関連して押さえておくべき用語として、①電子決済等代行業者、②オープンAPIの二つがあります。
①電子決済等代行業者:金融機関と預金者(ユーザー)を仲介する事業者
②オープンAPI:金融機関と外部事業者との間で安全なデータ連携を実現する仕組み
最近では①、②に関連する法律が整備されてきているので、自動仕訳は安全に利用できます。
自動仕訳の運用を定着させるためのポイント
――税理士事務所が自動仕訳を使って業務効率化を実現するうえでのポイントを教えてください。
岩原:大事なのは次の2点です。
①自動仕訳を顧問先に導入してもらう
②自動仕訳の運用を事務所に浸透させる
①については顧問先に、②については事務所のスタッフに、それぞれ自動仕訳のメリットを理解してもらう必要があります。まず①に関しては、業種を問わず、法人・個人も問わず、どんな顧問先にも自動仕訳はお勧めできます。振込手数料が安いことや、銀行へ頻繁に行かなくてもよいことなど、インターネットバンキングの利点を伝えることで、自動仕訳を導入してもらうことが第一歩となります。
また②に関しては、複数のスタッフがいる事務所の場合、一人だけが自動仕訳を使っても効果が低いため、事務所全体として運用していく必要があります。まずは新しいことにチャレンジする意欲の高いスタッフに率先して使ってもらうなど、仕組化するための対応を考えることが大切です。
――中小企業の中には、インターネットバンキングを敬遠するところもあると聞きます。
岩原:顧問先が法人の場合、インターネットバンキングを始めるのに利用料がかかることがあります。「有料ならやりたくない」「使い方がよくわからない」といった顧問先に対しても、自動仕訳を導入するメリットを伝える必要があります。
さまざまなメリットが考えられますが、例えば経営者に提案するケースでは、損益の数字を早く伝えられるようになる点を強調してみるとよいと思います。自動仕訳が実現できると、税理士事務所はリアルタイムに企業の明細情報を受け取れます。残高合わせや記帳もスピーディーになります。試算表を出すスピードが速くなり、結果的に損益の数字を経営者に早く伝えられるようになるのです。経営者が喜ぶポイントだと思います。
――他にもメリットはありますか?
岩原:自動仕訳の魅力の一つは、コミュニケーションコストを削減できる点にあります。例えば顧問先に通帳のコピーを郵送してもらったり、通帳の内容を写真に撮ってLINE(ライン)で送ってもらったりする際に、間違った範囲をスキャンしたためにもう一度送り直してもらうなど、本来であれば不要なコミュニケーションを削減できるのです。
――どの程度のインパクトなのか数字を示すことはできますか?
岩原:実際に記帳業務の8割を自動化した税理士事務所があります。その事務所では最初、スタッフの中に自動仕訳の導入に後ろ向きだった人もいたそうです。記帳業務が自動化されることで自分の仕事が奪われるという意識が働いたためです。
また新しいことに対するチャレンジを嫌がる人が一定数いるのも事実です。そうした人たちには、例えば自動仕訳を導入することで残業が減らせるとか、ケアレスミスをなくせるとか、自分自身のスキルアップのために時間を使えるようになるとか、具体的なメリットを示すことが大切です。
自動仕訳を実現するA-SaaSコネクト
――Mikatusが提供する会計サービス「A-SaaS(エーサース)」では、どのように自動仕訳を実現しているのでしょうか?
岩原:A-SaaSでは、A-SaaSコネクトという機能が自動仕訳を実現します。アカウントアグリゲーションの機能を提供する「Moneytree(マネーツリー)」とA-SaaSコネクトを連携させることで、2,400件を超える金融機関などとの取引情報をA-SaaS内に取り込むことが可能になります。
A-SaaSは会計、給与、税務といった従来業務だけでなく、財務を支援するキャッシュ・イズ・キングや、経営を支援するYOSOD(ヨソッド)といった機能を含むオールインワンのサービスです。自動仕訳の導入により捻出した時間を財務支援や経営支援といった付加価値の高い業務に振り向けることにより、顧問先の満足度を高め、他の税理士事務所との差別化を図ることができるようになります。
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以上、ここではMikatus主催の自動仕訳に関するセミナーについて、西嶋と岩原に振り返ってもらいました。Mikatusでは今後も、税理士の皆さんに役立つ情報をオンラインセミナーを通して発信していきますので、ぜひご期待ください。