
税理士に独学でなることは可能?最も現実的な合格方法を解説!
税理士試験に独学で合格することには様々な困難が伴います。しかし、金銭的な制限などから独学で挑戦せざるを得ないという人も多いでしょう。この記事では、税理士試験にできるだけ独学で合格するための現実的な方法と、独学で進めるうえで注意すべきことについて解説します。
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税理士試験に独学で合格することは可能?
税理士試験に独学で合格することは不可能ではありません。実際、税理士試験に合格した人のうち、ごく少数ではありますが、独学で合格したという人もいます。ただし、税理士試験は国内有数の難易度を誇る試験であり、合格することは簡単ではありません。
5科目の合格に必要な勉強時間は、合計で3,000時間前後と言われており、合格までに5年以上かかることも珍しくありません。長期戦となることは避けられないので、独学で受験をする際は、しっかりとした計画と準備をしておくことが不可欠です。
税理士試験を受験する前に確認しておくべきこと
税理士試験を受験する際は、いくつか確認しておくべきことがあります。特に受験資格の有無の確認と、実務経験については大事な点なのであらかじめ、確認しておくようにしましょう。
受験資格の有無を確認すること
税理士試験を受験する際はまず、自分に受験資格があるかを確認しておく必要があります。
税理士の仕事は、人々の生活や国政に関わる重要なものであるため、受験するには、学識や経歴などの一定の要件を満たす必要があります。それぞれの要件はそこまで厳しいものではありませんが、後から受験資格がなかったとなれば、時間を無駄にしてしまうので、あらかじめ確認しておくのが良いでしょう。
また、令和4年度の税理士法改正では、受験資格要件の大幅な緩和が実施されています。この改正に伴い、令和5年4月1日以降に実施する税理士試験では、会計学に属する科目は誰でも受験できるようになったほか、高校生や大学生でも受験ができるようになりました。
詳しくは下記のページから確認してください。
税理士試験の特徴を押さえる
税理士となるには、国税庁が毎年8月に実施する税理士試験に合格し、日本税理士会連合会にある名簿に登録をする必要があります。名簿登録には、税務または会計に関する事務に2年以上従事することが条件に定められているので、試験の合格と2年間の実務経験を積むことが税理士になる条件と言う事ができます。
税理士試験は全11科目ある科目の中から自分で5科目を選び、受験する仕組みです。一度に受験する科目数は自分で調整することができ、合格した科目は生涯有効となる「科目合格制」を採用しており、合格した科目数が5科目に到達した時点で試験合格となります。
合格規準点は各科目とも満点の60%とされていますが、実際の採点には相対評価が導入されているとも言われており、合格規準点は各科目でかなりのばらつきがあるとされています。
税理士登録には2年間の実務経験が必須となること
税理士登録をする際は、5科目の合格に加えて2年間の実務経験も必要になります。この場合の実務経験とは、税務または会計に関する事務を指し、該当業務に従事した期間ではなく、実労働時間をもとに計算が行われるのが特徴です。
分かりやすく言えば、会計または税務に関する業務をした時間の合計が2年(=3,696時間)以上であることが条件となるため、それ以外の業務に従事した時間や出勤していない日の時間は計算に入れることができない仕組みになっています。
当然、フルタイムの仕事を続けながら条件を満たすのは難しいため、税理士試験の受験生はどこかのタイミングで現在の仕事を退職し、税理士事務所などで働くことになります。
また、実務経験として計上できる時間数には制限があるため、短期間で一気に条件を満たすことはできないことも押さえておきましょう。具体的には、一日の従事時間は7時間、一月の従事時間は154時間が限度と定められており、それ以上の時間は対象外となります。
条件である3,696時間を満たすには、154時間×24か月の期間を要するため、最低でも2年間は税理士事務所などで働くことになります。
実務経験の対象となる業務や計算方法については、以下のページから確認できます。
予備校と独学ではどちらがベター?
予備校に通う場合と独学で進める場合では、それぞれにメリット・デメリットがあります。
例えば、予備校に通う場合は、合格に必要な対策を丸ごと任せられるのが魅力です。各科目の合格に必要な教材やカリキュラムを予備校側で用意してもらえるのはもちろん、講師陣への相談や自習室の利用などもできるので、安定した環境で勉強に集中することができるでしょう。
ただし、予備校は科目を絞って利用しても、年間で数十万円の費用がかかります。税理士試験は長期の受験となりやすいため、すべての期間で利用するのは避けた方が良いでしょう。
対して、独学で勉強を進める場合は、自分のペースで勉強を進められるのが魅力です。フルタイムで仕事をしている人や子どもの送り迎えがある人の場合は、勉強に使える時間が限られているため、独学の方が安定して勉強がしやすいこともあります。予備校に通う場合と比べると、受験に必要な費用も抑えられるため、金銭的な負担をかけずに挑戦を続けることができるでしょう。
ただし、独学は、事前の情報収集がネックになります。教材の選択や受験情報などを自力で取得しなければならず、詰まったときに相談できる人もいないことになるので、ある程度勉強に慣れた人でなければ難しいでしょう。
できるだけ独学で合格する、最も現実的なプラン
できるだけ費用をかけず、確実に合格を目指すプランとしては、折衷案が考えられます。これは、初めの1、2年は予備校を利用して基礎をしっかりと学び、難易度の低い科目については独学で勉強を進めるパターンです。
税理士試験では、各科目が完全に独立しているわけではなく、それぞれの科目が別の科目を理解する土台となっています。特に、簿記論と財務諸表論については、二つ合わせて別の科目を理解する土台となっているため、一番初めに受験するのがセオリーとされています。
ただし、簿記論と財務諸表論は難易度が高く、予備校でサポートを受けられた方が学習をスムーズに進められます。また、予備校に通うことで勉強の仕方や受験スケジュールの立て方も分かるようになるので、初めの1、2年は予備校を利用するのがおすすめです。
一方、酒税法や国税徴収法、住民税などの科目については簿記論や財務諸表論ほど学習難易度が高くなく、独学で進めるのはそこまで難しくありません。こうした科目まで予備校に頼ってしまうと費用負担がかさむため、独学で進めるのが良いでしょう。
また、5科目の合格が見え始めた段階では、税理士登録で必要となる、実務経験を積むことも並行して行わなければいけません。税理士事務所は一年の約半分が繁忙期となり、予備校に通う時間がとりにくくなるため、この段階ではむしろ独学で進めた方が安定して勉強を進めやすくなることがあることも押さえておきましょう。
予備校に通う場合は教育訓練給付制度を利用するのが得
もし、予備校に通うための学費がネックになる場合は、国の補助金を利用するのも選択肢の一つです。
厚生労働省では、労働者のキャリアアップを支援する目的で教育訓練給付制度を設けています。この制度は一般教育訓練給付、専門実践教育訓練給付、特定一般教育訓練給付の三つに分かれており、各予備校でそれぞれの給付金に対応したコースが設けられています。
制度ごとに支給される金額や支給要件は異なりますが、最大で受講料の50%が返金されるので、利用を検討してみるのも良いでしょう。
独学をする際に注意すべきこと
税理士試験を独学で進める場合は、自分で情報収集や試験対策などを入念に行う必要があります。ここではその中でも特に見落としがちなポイントを解説します。
科目の組み合わせには制限がある
税理士試験では、一部科目の組み合わせは認められていません。具体的には、酒税法と消費税法、住民税と事業税はそれぞれどちらか一つの科目しか選択することができません。どちらかに合格すると、もう片方は選択できなくなるので注意しましょう。
勉強する科目の順番を吟味する
税理士試験では各科目が完全に独立しているわけではなく、一つの科目が別の科目を理解するための土台となっていることがあります。
例えば、簿記論では企業の活動から帳簿を記録する方法を学びますが、財務諸表論では、その記録をもとに財務諸表を作成する方法について学んでいきます。簿記論と財務諸表論は、二つ合わせて法人税と所得税を理解するための土台にもなっているため、初めに勉強しておくことでこれらの科目の学習がスムーズに進められます。
さらに、法人税は事業税、住民税は所得税を理解していることが前提となっているため、勉強する際は学習する順番を吟味するようにしましょう。
大学院を活用するのも手
税理士試験には、大学院で税法または会計学に属する科目の研究を行った者のうち、国税審議会に認定された者については、試験科目を一部免除するという制度があります。
この方法を使えば、2年で確実に2科目に合格できるため、通常の試験を受けるよりも確実に合格に近づくことができます。
ただし、認定を受けるには、以下の要件を満たす必要があるため、進学する大学院で該当する科目があるか、該当科目の論文指導ができる教員がいるかといった点はあらかじめ確認するようにしておきましょう。
- 税法に属する科目の認定を受けるためには、大学院において所得税法や法人税法などの税法に属する科目等(学問領域は問19〜問20参照)の研究により学位を授与されていること。
- 会計学に属する科目の認定を受けるためには、大学院において簿記論や財務諸表論などの会計学に属する科目等(学問領域は問21〜問29参照)の研究により学位を授与されていること。
- 申請する分野(税法に属する科目又は会計学に属する科目)の試験科目のうち、1科目の試験で基準(満点の60%)以上の成績を得ていること(いわゆる一部科目合格していること(問5参照))。
出典 国税庁「2 修士の学位等による試験科目免除(研究の認定を含む。以下同じ。)について〔税理士法改正後〕」
合否を分けるのは繁忙期の姿勢
税理士試験の受験生は、どこかのタイミングで勤務先を退職し、税理士法人などで働きながら勉強をするのが一般的です。
この際、ネックとなるのが税理士事務所の繁忙期です。税理士事務所は、毎年12月~5月が繁忙期となり、終電近くまで残業をするのが常態化します。税理士試験は毎年8月に実施されるため、この時期に姿勢を崩さずに勉強を続けられるかが合否を左右することになります。
予備校に通っている人の場合は補講などを利用して授業に遅れないようにする、独学で進めている人の場合は、1時間でも毎日欠かさずに机に向かうといった工夫が必要になるでしょう。
まとめ
税理士試験に独学で合格することは不可能ではありません。
ただし、税理士試験は国内有数の難易度を誇る試験であり、合格に必要な勉強時間数も膨大なため、一筋縄ではいかないことを押さえておきましょう。特に、一番初めに勉強することになる簿記論と財務諸表論については、学習難易度が高いため予備校を利用するのがおすすめです。厚生労働省では、教育訓練給付制度を設けており、一定の条件で学費を助成してくれるため、費用がネックになる場合は、利用を検討してみるのが良いでしょう。