
マイナンバー 税理士の先生が考えるべき対策とは vol.5 <利用>
税理士事務所が係る個人番号の利用シーン
平成28年1月から個人番号、法人番号の利用が始まります。
平成28年中に個人番号の利用が必要となるシーンとしては、申請・届出などで個人番号を利用、記載した種類の提出があります。
個人事業者に係る申請・届出書では、個人番号の記載が必要となりますので、必要となった時点で、税理士事務所から事業者へ個人番号の提供を求め、個人番号を記載して申請・届出書を作成、提出することになります。
取得や保管の回でメインに取り上げた、多くの個人番号を取扱う年末調整業務での個人番号の利用は平成28年末の作業からがメインであり、実際の税務署等への源泉徴収票等書類の提出は平成29年1月になります。ただし、平成28年1月以降に退職者が出て退職所得がある場合は、退職所得の源泉徴収票を作成しますが、当該退職者の個人番号を記載した退職所得の源泉徴収票を作成、提出することになります。
(参考:源泉徴収票はマイナンバー対応で現状のA6サイズからA5サイズに変わる予定です。)
税務署等への書面での提出と電子申告での違い
税理士が顧問先の代理人として個人番号が記載された申告書や申請・届出書、法定調書等を税務署に書面で提出する場合、法令で定められた本人確認書類等の提示が求められることになります。
国税庁の「国税分野におけるFAQ」では具体的に、
(1)委任状
(2)代理人の個人番号カードや運転免許証による身元確認
(3)顧問先の個人番号カードや通知カードの写しなどによる本人確認
の3点の提示、確認が必要とされています。
これらの提示、確認について、日本税理士会連合会の「税理士のためのマイナンバー対応ガイドブック(会員専用)」によると、
(1)については、税務関係手続においては「税務代理権限証書」が「委任状」に相当する書類となることから、個人番号が記載されている申告書等の提出の都度、税務代理権限証書の提出が必要となると説明されています。
(2)の代理人の身元確認については、税理士として個人番号が記載されている申告書等を提出する際には、税理士としての身元確認として税理士証票の提示又は写しを添付するように説明されています。
(3)については、「国税分野におけるFAQ」と同様に、顧問先納税者の個人番号カードや通知カードの写しの添付が必要となるとされています。
個人番号を記載した申告書等の書面による提出に際しては、上記の通り以前にも増して煩雑な手続が必要となることになります。これに対して、電子申告・申請では、個人番号が記載された申告書等の場合でも、従来通りの代理送信が認められており、税理士事務所における税務申告・申請の効率性、利便性を考えると、個人番号が記載される申告者や申請・届出書については、すべて電子申告・申請で行う流れが、より加速することになると考えられます。
当社では、提出時の煩雑さや納税者本人の個人番号カード又は通知カードの写しを取り扱うことによる漏洩、滅失等のリスクを軽減するためにも、個人番号の記載が必須となる申請・届出書の電子申請対応など電子申告への取り組みを強化してまいります。
その他の個人番号利用シーンと注意点
税務署等への提出以外でも個人番号を記載した書類の作成が必要になるシーンがあります。それは、年末調整業務における本人交付用の源泉徴収票です。
国税庁の「国税分野におけるFAQ」Q2-8では、以下のように記載されています。
「税法上、本人に対して交付義務のある源泉徴収票については、本人及び扶養親族等の個人番号を記載して本人に交付しなければなりません(ただし、本人に交付する給与所得及び退職所得の源泉徴収票については、支払いをする者の個人番号又は法人番号の記載は不要です)。」
本人及び扶養親族等の個人番号が記載された源泉徴収票を、本来の番号法に即して利用するケースは、本人が所得税の確定申告を行う際に申告書に添付して提出する場合が考えられています。その一方で、源泉徴収票を所得証明として金融機関等に提出する場合は、番号法で定められた利用、提出に当たらないため個人番号を分からないようにマーキングすることが求められるなど、この本人交付の源泉徴収票の取り扱いについては、混乱が生じる可能性があります。そのため、国税庁では本人が希望する場合は、本人及び扶養親族等の個人番号を記載しない源泉徴収票を交付することもできるとしています。
税理士事務所が本人交付用の源泉徴収票を印刷、顧問先へ提供する場合は、顧問先および従業員に以上の要件を周知した上で対応していく必要があります。ただし、税理士事務所で個人番号が記載された源泉徴収票を印刷し、顧問先に受け渡すとなると、ここでも漏洩、滅失のリスクが生じますので、当社のシステムをご利用されている場合は、先の要件を顧問先および従業員に周知させた上で、クラウドの利点を活かして、顧問先で本人交付用の源泉徴収票の印刷、交付をしてもらうといったことも可能になりますので、こうした運用を検討されることをお勧めいたします。
税の分野でのマイナンバー制度について、税理士事務所に係る要件として、「委託」、「取得」、「保管」、「利用」の各シーンに分けて、どのようなことが課題となるのか、その課題解決のために何を準備しなければならないのか、などを見てきました。当社では、マイナンバー制度へのシステム対応としてクラウドだからこそできる「持たない」仕組みで、税理士事務所および顧問先中小企業に掛かる負荷を徹底して軽減できる対応を準備していきます。詳細は今後公開してまいりますので、是非とも当社A-SaaSシステムのご利用をご検討ください。