
自計化とは?勧めるべき会社の基準や交渉のポイントを税理士向けに解説
自計化は資金調達や経営判断をスムーズに行うための方法として近年、高い関心が寄せられているテーマの一つです。そこでこの記事では税理士向けに自計化を勧めるべき顧問先の基準や交渉の際のポイント、顧問先に自計化を勧めるメリットなどについて解説します。
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そもそも自計化とは?企業側のニーズが高まった背景
自計化とはこれまで税理士事務所に依頼していた経理業務を自社で行うことです。
企業にとっては経理作業の負担が増すことになりますが、その分、直近の業績を把握できるようになるので、経営判断がしやすくなり、利益予想や節税対策がしやすくなるといったメリットがあります。
加えて、試算表や月次決算書をすぐに出せる体制を構築することもできるので、金融機関からの融資が受けやすくなり、リスケジューリングにも対応してもらいやすくなる点も魅力です。
特に近年では新型コロナウイルスの流行に伴い、手元の資金を頻繁に確認したい、資金調達をできるだけ早く実施したいといったニーズが顕在化するようになり、自計化に対しても前向きな考えの企業が増えつつあるといわれています。
自計化を提案すべき会社の基準
自計化を勧めるべき企業の基準は、業種や置かれている環境にもよりますが、専任の人材の採用や育成、設備投資などが必要になるため、それだけの費用を負担できるだけの余力が企業側になければいけません。
また、実際に自計化の計画を進めていく段階になれば、計画の主体になるのは企業の側になります。
事前に計画への十分な賛同が社内で得られていなければ、計画が途中で頓挫してしまうことも考えられるため、顧問税理士として十分な事前説明の機会を設けるようにしましょう。
税理士の側で計画の全体像を提示し、自計化をするメリットや必要になるもの、乗り越えるべき課題などを明らかにするようにしましょう。
十分な説明をしたうえで顧問先が自計化の提案に魅力を感じていないと思われる場合は、主体的な取り組みが期待できないため、計画に取り組むべき段階ではないとも考えることができます。
顧問先に自計化の導入提案をする際のポイント
自計化は多くの企業にとって未知の分野であり、負担のかかる取り組みでもあるため、提案をする際は慎重に話を進めていく必要があります。ここでは交渉の際に気を付けるべきポイントをご紹介します。
現状の課題の整理から入る
企業にとっては、コストを削減するために税理士に経理業務を外注しているという側面もあります。自計化の提案がコスト増と捉えられてしまうと提案そのものに嫌悪感を抱かれてしまうため、まずは現状の課題についての話から始めていくのが良いでしょう。
具体的には、資金調達や経営判断で困っていることはないかと持ち掛け、それを解決する手段として自計化を持ちかける方法が考えられます。
利益予想がしやすくなることで節税対策を行いやすくなることや金融機関からの融資が受けやすくなること、リスケジューリングに対応してもらいやすくなることは特に大きな魅力として捉えてもらえる可能性があります。
計画の全体像を提示する
顧問先にとって自計化は未知の分野です。
計画の全体像や必要なリソースを把握し、実行を支援してくれるガイド役がいなければ納得して取り組んでもらうことは難しいでしょう。
提案の際には、税理士事務所の側でロードマップを作成し、どんなスキルを持った人材が何人必要なのか、その人材をどのような手段で確保し、育成するのか、問題が起きたときに税理士事務所の側でどのようなバックアップをするのかを予め伝えておくのが良いでしょう。
必要に応じて半自計化も提案する
顧問先が自計化を導入するか迷っている場合や最低限の数値だけを把握できれば良いという場合は、半自計化を提案するのも選択肢の一つです。
半自計化とは経営の意思決定ができる範囲までの経理を自社で行い、細かな数字を詰めたり、入力作業はこれまで通り外注するという方法です。具体的にどのような項目をどの程度まで絞り込むかは顧問先の性質にもよりますが、意思決定を早急に下さなければならない場合は検討しても良いでしょう。
税理士事務所にとって自計化を勧めるメリット
顧問先に自計化を導入するメリットとして、顧問先の数字に対するリテラシーをはぐくめるというメリットが挙げられます。
これまでは報告されるだけだった自社の数字を、顧問先自ら実際に自分で計算することで理解してもらえるようになり、節税に関する助言や資金調達の重要性について以前よりも関心を寄せてもらえるようになるでしょう。
また、税理士事務所にとっても一件当たりの顧問先にかかる時間を減らすことができるので、付加価値の高いサービス提供の時間として使うことができるようになります。財務分析や資金調達の実行支援などのサービスを提供することができれば、顧問料のさらなる増加が見込めるでしょう。
税理士事務所にとって自計化を勧めるデメリット
自計化を行う場合は顧問報酬の見直しが入る可能性があります。これまで記帳代行が収益の中心であった事務所は収益に大きな影響が出る可能性があることを押さえておきましょう。
また、自計化の初期段階ではどうしても記帳ミスが発生してしまうため、修正に余計な手間がかかってしまいます。場合によっては以前よりも時間と労力がかかってしまうことも考えられるため、短期的な費用対効果は期待できないことも押さえておきましょう。
自計化するうえで便利なソフトはインストール型?クラウド型?
基本的にはインストール型とクラウド型のどちらでも自計化をすることはできますが、利便性を重視するならクラウド型の会計ソフトの方が良いでしょう。
インストール型の中には機能を独自にカスタマイズできるものもあり、社内システムと連携させやすいというメリットがありますが、システム障害などが起きた際に自社で対応を行う必要があるため、その分のリソースが別途必要となります。
クラウド型にも継続的なコストがかかるというデメリットがありますが、自動仕訳や入出金の情報などの自動取り込みを利用できるので、会計の知識が乏しい人でも利用しやすい環境が整っています。
また、クラウド型はネットで画面を共有しながら作業ができるので、指導やアドバイスをしやすい点も魅力です。顧問先側で何か不安なことが起きてもその場で対応できるため、余分なコストがかかりません。
まとめ
自計化とは営業取引の内容を自社で記帳することです。
自計化を提案することで顧問先には利益予想や節税対策がしやすくなるなどのメリットがありますが、税理士事務所にとってもより付加価値の高いサービス提供のチャンスが生まれるというメリットがあります。
短期的には費用対効果がマイナスになることもあり得ますが、他事務所と差別化をしていくうえでも有利に働くので、折に触れて提案してみるのも良いでしょう。
自計化を勧めるべき会社の基準は業種や業態によって異なりますが、基本的にはある程度の規模感が必要になります。無理なく進められると税理士の側で判断できた場合に提案するのが良いでしょう。