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インボイス制度の変更点と準備の要点 第6回 ~インボイス制度対応に向けた準備のまとめ~

皆さん、こんにちは。
freeeの中尾です。

これまで5回にわたってインボイス制度の変更点と、それに対応するための準備の要点をみてきました。今回の改正は消費税が施行されて以来、最も大きな改正といえます。その影響は課税事業者はもちろん免税事業者にも及びます。

今回は、インボイス制度に対応するために売手・買手それぞれの立場で必要な準備に焦点を当てて、これまでの連載の内容をまとめていきましょう。

目次[非表示]

  1. 1.売手としての準備の要点
    1. 1.1.インボイス発行事業者として登録を受けるか判断する
      1. 1.1.1.STEP1:売り先と早めにコミュニケーションをとり、登録を受けるか判断する
      2. 1.1.2.STEP2:登録を受ける場合は早めに申請する
    2. 1.2.インボイス発行事業者の登録を受ける場合に準備すること
      1. 1.2.1.何をインボイスにするかも売り先とコミュニケーションする
      2. 1.2.2.インボイス対応を機に請求書発行業務等のシステム化を検討する
      3. 1.2.3.免税事業者が登録を受ける場合は消費税申告のために必要な準備をする
      4. 1.2.4.売上税額を「積上げ計算」する場合はルールを確認する
  2. 2.買手としての準備の要点
    1. 2.1.仕入先が発行事業者かどうかなど早めのコミュニケーションで確認する
    2. 2.2.経費等でインボイス等の保存が必要な取引を確認する
    3. 2.3.「仕入税額控除」に係る事務処理増の軽減にはシステムの活用を検討する
  3. 3.むすびにかえて


売手としての準備の要点

インボイス発行事業者として登録を受けるか判断する

インボイス制度で最もインパクトのある変更点は、以下のようにまとめることができます。

(第1回から転載)

売手の立場でこの要点を組み合わせて考えると、まずインボイス発行事業者としての登録を受けるかの判断、そして登録をする場合は申請時期が課題となります。

STEP1:売り先と早めにコミュニケーションをとり、登録を受けるか判断する

まず確認しておきたいのは、売り先が取引に当たって「仕入税額控除」のためにインボイス等を必要とし、その交付を要求してくるかどうかです。コミュニケーションはできるだけ早めに取り、売り先の回答によっては、現在免税事業者であったとしても将来の経営を考え、インボイス発行事業者の登録を受けるべきか検討しましょう。

STEP2:登録を受ける場合は早めに申請する

インボイス発行事業者の登録を受ける場合は、登録申請する必要があります。インボイス制度が施行される令和5年10月1日にインボイス発行事業者になるためには、令和5年3月31日までに登録申請する必要があります。この期限については猶予措置(詳しくは連載第2回参照)もありますが、判断を先延ばしせざるをえない特段の事情がなければ、この期日を念頭に置いて検討していきましょう。


インボイス発行事業者の登録を受ける場合に準備すること

インボイス発行事業者の登録を受けると、インボイス等の交付が以下の通り「義務」となります。

(第3回から転載)

売り先が事業者であれ消費者であれ、請求書やレシートなどの交付は売手として現在も行っているはずです。「義務」と言われると負担を感じる方もいらっしゃるかと思いますが、これまでやってきたことを継続しつつ、請求書やレシートの記載内容をインボイス等で求められるものに対応させていきましょう(詳しくは連載第3回参照)。

対応にあたっては、売り先との認識合わせや付随して必要になる可能性のある申請など、まず以下の4点を念頭に置いておくとよいです。

何をインボイスにするかも売り先とコミュニケーションする

インボイス等に記載する消費税については、一つのインボイスで税率ごとに一回の端数処理としなければならない、などのルールがあります。一方で、納品時点で交付する納品書をインボイスにするか、ひと月単位で交付するまとめ請求書をインボイスにするかといった点は任意です。

売り先が事業者の場合は、インボイス発行事業者になったことを案内すると同時に、何をインボイスにするか、どの書類で消費税の端数処理をするかについてもあらかじめコミュニケーションをとって認識をあわせておくようにしましょう。

インボイス対応を機に請求書発行業務等のシステム化を検討する

小規模事業者の場合は、現在請求書を手書きしていたりExcel等の表計算ソフトで作成したりしているケースも多いかと思います。インボイスの記載内容や端数処理のルールを満たした請求書等を作成するに当たっては、インボイス対応の請求書を作成できるシステムを利用した方が間違いがなく手間もかかりません。

売手としてインボイス発行事業者となる場合は、インボイス対応を機に請求書まわりの業務を改善・効率化するためにシステム利用を検討することも、制度対応への準備の課題として取り組んでいきましょう。

免税事業者が登録を受ける場合は消費税申告のために必要な準備をする

免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受ける場合は、以上のインボイス等を交付できるようにする準備の他に、新たに消費税の申告も発生します。申告業務の負荷を軽減するために簡易課税を選択することも検討し、必要に応じて簡易課税選択の届出をする準備もしておきましょう。

売上税額を「積上げ計算」する場合はルールを確認する

少額、大量の売上があるような売手の場合、現行制度では税額計算で売上税額を「積上げ計算」しているケースがあります。インボイス制度が施行されると、売上税額を「積上げ計算」できるのはインボイス発行事業者のみとなります。また、本則課税の事業者が売上税額を「積上げ計算」する場合は、仕入税額も「積上げ計算」しなければなりません(詳しくは連載第5回参照)。現行制度で売上税額を「積上げ計算」している売手の事業者は、税額計算方法についても検討し、対応準備をしておく必要があります。


買手としての準備の要点

買手としての準備は「仕入税額控除」に関することが要点となります。
そのため、「仕入税額控除」が消費税計算の要件となる本則課税の事業者以外、インボイス制度下で簡易課税の適用を受ける事業者や免税事業者はこの項の対象外です。

仕入先が発行事業者かどうかなど早めのコミュニケーションで確認する

インボイス制度下ではインボイス等の保存が「仕入税額控除」の要件となります。
継続的に取引のある仕入先については、インボイス発行事業者の登録を受けるかどうかをまず確認しましょう。現時点では、判断しかねていたり、受けるつもりでも登録申請していなかったりする仕入先もあると思われます。仕入先が登録を受ける場合も受けない場合も、確実に連絡をしてもらえるようにしておくことが大事です。

その上で、登録を受ける仕入先に対しては、何をインボイスとするのかなども認識合わせをしておきましょう。また、登録を受けない仕入先と継続して取引する場合は、当該仕入先が発行する請求書とインボイスとを区分して管理し、経過措置を適用した仕入控除税額が計算できるような仕組みを検討しておきましょう(詳しくは連載第4回参照)。


経費等でインボイス等の保存が必要な取引を確認する

経費などの少額な取引でも課税仕入に該当する場合はインボイス等の保存が必要です。一部インボイスの発行が免除されている取引などは一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除できます。

現在経費などで処理している取引でインボイス等の保存が必要なものはあらかじめ確認し、これらの取引に際してはインボイス等を受領する必要があることを社内に周知しておきましょう。

またこうした点から、これらの取引のうち継続的な取引先に対しては、上記の仕入先と同様の確認も必要です。継続的な取引先からの取引ではない場合は、取引のつど、受領した請求書や領収書などを確認してインボイス発行事業者との取引かどうかを確認する必要があります。

このように、買手の課題は仕入だけでなく経費に至るまで、インボイス発行事業者との取引かどうかを区分して経理処理しなければならない点にあります。


「仕入税額控除」に係る事務処理増の軽減にはシステムの活用を検討する

売手としての課題はインボイスで求められる記載事項への対応など、システムで対応してしまえばその後は運用するだけですみます。しかし、買手としての課題はインボイス制度が始まればその先ずっと継続対応が必要になります。それだけ事務処理にかかる負荷も大きくなりますので、やはり買手としてもシステムでの対応検討がポイントになります。

受領した請求書や領収書をOCRなどで読み取って、これらの相手先がインボイス発行事業者かどうか判別するようなシステムと会計システムが連動していれば、それだけ負担が軽減できます。


むすびにかえて

インボイス制度の開始まで一年を切りました。

インボイス発行事業者の登録件数は2022年9月末時点で120万件を超えてきました。登録のペースも少し上がってきています。しかし課税事業者数や総事業者数を考慮すると、まだまだ登録申請はこれからという事業者も多いはずです。

インボイス発行事業者の登録を受けるかどうか早めに判断するために取引先とコミュニケーションをとること、登録を受ける場合は売手としての準備を進めること、本則課税の事業者は買手として「仕入税額控除」の要件に対応した準備を進めること。

ぜひ残された時間を有効に活用して、これらの準備を進めていただきたいと思います。

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