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インボイス制度の変更点と準備の要点 第5回 ~インボイス制度下での税額計算~

皆さん、こんにちは。
freeeの中尾です。

インボイス制度の下では消費税の税額計算方法が見直され、適用ルールが変更になります。最もこの影響が大きいのは、少額・大量の取引を行う小売業者等の事業者が売上税額を「積上げ計算」しているケースです。
今回は、このインボイス制度の下での消費税の税額計算および適用ルールについてみていきましょう。

目次[非表示]

  1. 1.消費税の税額計算方法と適用ルール
    1. 1.1.売上税額・仕入税額の計算方法
    2. 1.2.適用可能な計算方法の組み合わせ
  2. 2.インボイス制度下で売上税額を積上げ計算するには


消費税の税額計算方法と適用ルール

まず現行の制度では、売上税額・仕入税額は課税期間での課税取引の税込総額をベースに計算する方法(A-SaaSシステムでは「期間合算」と呼んでいます)を原則としています。そして、取引ごとの税額を合計して売上税額・仕入税額とする「積上げ計算」も特例として認められています。

この特例は、少額・大量の取引を行う小売業者等が取引ごとの消費税額を切り捨て処理で計算している場合、売上税額が

となることから設けられたものです。こうした事業者は売上税額は「積上げ計算」、仕入税額は「期間合算」で消費税の納税額計算を行うケースが多いと考えられます。

インボイス制度でも、売上税額・仕入税額で「積上げ計算」と「割戻し計算」(上記で「期間合算」と呼んでいる計算方法と同じ)が選択できますが、売上税額と仕入税額で原則と特例が異なり、かつ以下のように適用可能な組み合わせは限定されています。


国税庁「適格請求書保存方式の概要」より作成

注: 7.8%は消費税率10%のうち国税分、6.24%は軽減税率8%のうち国税分です。
  78/100は現行税率の国税/(国税+地方税)の比率です。


売上税額・仕入税額の計算方法

まず、売上税額の計算方法をみていきましょう。
売上税額の原則となる計算方法は「割戻し計算」です。計算方法は現行の「期間合算」と同じです。
売上税額では、「積上げ計算」は現行制度と同じく特例扱いとなります。また、売上税額の計算では「割戻し計算」と「積上げ計算」を併用することができます。
売上税額の計算で要注意なのは、「積上げ計算」を適用できるのはインボイス発行事業者のみとなることです。

一方、仕入税額の計算方法では、「積上げ計算」が原則となります。
「積上げ計算」は原則、インボイス等に記載された税額を税率ごとに合計して計算します(「請求書積上げ計算」と呼ばれます)が、仕入税額の計算方法では「帳簿積上げ計算」も「積上げ計算」として認められています。「帳簿積上げ計算」とは、課税仕入のつど支払対価の額から仮払消費税等を帳簿に計上し、その税額を税率ごとに合計して計算する方法です。この「請求書積上げ計算」と「帳簿積上げ計算」は併用することができます。

仕入税額の計算方法としては「割戻し計算」も適用可能ですが、こちらは特例扱いとなります。なお、仕入税額の計算では「積み上げ計算」と「割戻し計算」の併用はできません。


適用可能な計算方法の組み合わせ

インボイス制度の下では、売上税額・仕入税額でどの計算方法を適用するか自由に組み合わせて良いわけではありません。改めて適用可能な計算方法の組み合わせを表にまとめると以下のようになります。


国税庁「適格請求書保存方式の概要」より作成

※簡易課税を選択している場合は、仕入税額を課税仕入の取引から計算するわけではありませんので、上記の組み合わせの制約はなく売上税額を「積上げ計算」することができます。

​​​​​​​

現行制度でもっとも多い計算方法の組み合わせは、売上税額・仕入税額とも「割戻し計算」を適用するケースですが、インボイス制度でもこの組み合わせは適用することができます。
一方、現行制度で売上税額を「積上げ計算」している場合は、ほとんどのケースで仕入税額を「割戻し計算」にしていると考えられますが、インボイス制度になるとこの組み合わせはできません。インボイス制度で売上税額を「積上げ計算」する場合は(「割戻し計算」との併用の場合も含めて)、仕入税額は必ず「積上げ計算」しなければならないのです。仕入税額を「積上げ計算」すると、仕入として控除できる税額は現行制度で「割戻し計算」する場合より減ります。

ただし、少額・大量の取引を行う小売業等の場合は一般的に

となるはずですので、現行制度で売上税額を「積上げ計算」している事業者はインボイス制度でも引き続き売上税額を「積上げ計算」したいと考えるのではないでしょうか。


インボイス制度下で売上税額を積上げ計算するには

先述の通り、インボイス制度の下では売上税額で「積上げ計算」を適用できるのはインボイス発行事業者のみということになります。
課税事業者だけど、ほとんどの販売先が消費者なのでインボイス発行事業者にならないとすると、インボイス制度では売上税額の「積上げ計算」はできず「割戻し計算」しか適用できません。現行制度で売上税額を「積上げ計算」している場合は、「割戻し計算」しか適用できなくなると売上税額が増えることになり、納付税額も増えることになります。

このような場合、インボイス発行事業者になることで増える事務処理コストと、売上税額を「積上げ計算」できなくなることで増える納付税額と比較するなどしてインボイス発行事業者の登録を受けるかどうか検討することになります。
インボイス制度開始後も事業を伸ばしていきたいと考えている課税事業者であればインボイス発行事業者になり、システム活用などで事務処理コストを抑え、売上税額を「積上げ計算」する方がメリットがあるのではないでしょうか。

売上税額を「積上げ計算」するとなると、仕入税額も「積上げ計算」しなければなりません。
消費税申告書作成時にこの組み合わせで会計システムから税額を集計して「積上げ計算」できるシステムであれば、そんなに手間なく売上税額の「積上げ計算」に対応できるはずです。

消費税の申告については、税理士に依頼している事業者も多いと思います。売上税額を「積上げ計算」したい事業者に関与している税理士も、現在使用しているシステムの対応を確認するなど、あらかじめ対応準備を進めておくことが大事です。

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