ASaaS Clip
日々の業務に役立つ情報をご紹介します。
catch-img

インボイス制度の変更点と準備の要点 第2回 ~インボイス発行事業者登録制度の概要~

皆さん、こんにちは。
Mikatus(ミカタス)の中尾です。

売手の立場で事業者の課題になるのが、インボイス発行事業者の登録を受けるかどうかという点です。特に免税事業者にとっては、今後の経営も考えた判断が求められます。
インボイス発行事業者の登録という制度は、インボイス制度で新たに設けられたものです。
今回は、このインボイス発行事業者の登録制度の概要をみていきましょう。


目次[非表示]

  1. 1.インボイス発行事業者登録の現状
  2. 2.インボイス発行事業者登録の仕組みと経過措置
    1. 2.1.申請から登録までの流れ
    2. 2.2.免税事業者への経過措置


インボイス発行事業者登録の現状

インボイス発行事業者登録申請の受付は、昨年10月1日からスタートしています。国税庁の「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」によると、今年7月末時点の登録件数は 812,324件となっています。この件数、かなり少ないのではないでしょうか?

参考に消費税の課税事業者等の件数をみてみると、以下のようになっています。


課税事業者(内、簡易課税)※

法人

2,038,158件(500,399件)

個人
1,138,647件(636,139件)
合計
3,176,805件(1,136,538件)

令和3年3月31日までに終了した課税期間の消費税申告件数より


現状のインボイス発行事業者の登録は課税事業者によるものですので、その登録件数は上記統計時の課税事業者の約25.6%程度ということになります。

免税事業者も合わせた全事業者数は統計により異なりますが、同時期の国税庁の統計を参照すると、法人税申告件数 3,010千件、事業所得の所得税申告件数 3,937千件となっており、合計した6,947千件を全事業者数としてみると、現在のインボイス発行事業者の登録件数は、約11.7%程度となります。


[図1] 全事業者数、課税事業者数に対するインボイス発行事業者数(2022年7月末時点)


これからインボイス発行事業者の登録を行う事業者がまだまだたくさんいるというのが現状ですし、免税事業者の本格的な検討もこれからのようです。


インボイス発行事業者登録の仕組みと経過措置

申請から登録までの流れ

インボイス発行事業者の登録を受けるためには、納税地を所轄する税務署長に「登録申請書」を提出する必要があります。その後、税務署による審査を経て登録を受けることになります。

登録申請を行った事業者には、登録番号などが「適格請求書発行事業者の登録通知書」により通知されます。また、インボイス発行事業者として、その氏名または名称や登録番号などの情報が国税庁の「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」に公表されます。

インボイス制度が開始となる令和5年10月1日にインボイス発行事業者になるためには、令和5年3月31日までに「登録申請書」を提出しなければなりません

この「発行事業者として登録するかどうかの判断」で、事業者としても関与する税理士としても悩ましいのが免税事業者の方々だと思います。


免税事業者への経過措置

免税事業者がインボイス発行事業者になるためには、まず課税事業者になる必要があります。免税事業者が課税事業者になるには、通常課税事業者となる課税期間の初日の前日、つまり前会計期間の末日までに「消費税課税事業者選択届出書」(以下「課税事業者選択届出」)を提出する必要があります。

インボイス発行事業者の登録制度では、免税事業者について「課税事業者選択届出」を提出しなくてもインボイス発行事業者になれる経過措置が設けられています。
具体的には、免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受けることとなった場合には、登録日から課税事業者となる経過措置が設けられています。

10月決算法人が令和5年10月1日にインボイス発行事業者の登録を受ける場合を例にとると、以下のようになります。


[図2]免税者に係る登録の経過措置( 国税庁インボイス制度に関するQ&A 問9を参考に作成)


免税事業者が令和5年10月1日にインボイス発行事業者になるために、事前に課税事業者となる場合、10月決算の法人であれば「課税事業者選択届出」の提出期限は今年の10月末日となります。本来であれば、それまでに課税事業者になる判断をする必要があるのです。

しかし、上記の経過措置により事前の「課税事業者選択届出」なしでも、令和5年3月31日までにインボイス発行事業者の登録申請を行えばよいことになります。この経過措置を利用する場合は、インボイス発行事業者の登録日から課税事業者になります。

この課税期間では簡易課税を選択できる経過措置も設けられていますので、免税事業者から課税事業者になるのに際して簡易課税を選択する場合は、その準備もしておきましょう(詳しくは国税庁インボイス制度に関するQ&A 問10 をご参照ください)。

また、国税庁は令和5年3月31日の期限についてこのようにも回答しています。

令和5年3月 31 日までに登録申請書を提出できなかったことにつき困難な事情がある場合に、令和5年9月30日までの間に登録申請書にその困難な事情を記載して提出し、税務署長により適格請求書発行事業者の登録を受けたときは、令和5年10月1 日に登録を受けたこととみなされます(国税庁インボイス制度に関するQ&A 問7

この「困難な事情」は、「制度の理解に時間がかかった」「発行事業者として登録するかどうかの判断に時間がかかった」なども認められると考えられます。


免税事業者である10月決算法人がインボイス発行事業者になるかどうかの決定をする期限は、経過措置や「困難な事情」による猶予措置を踏まえると、今年の10月末ではなくまだ先の話のようにもみえます。ただし、結論を先延ばしにすることをお勧めしているわけではありません。

前回「免税事業者の課題と対応」については詳述しました。
大事なポイントは前回まとめとした以下の点です。


  • 取引先との早めのコミュニケーション
  • 今だけでなく、将来を見据えた検討


今回の「インボイス発行事業者の登録」というテーマに沿って、これに加えるとすると、「時間を有効に使う」ということだと思います。ただ、「時間を有効に使う」ためには決定までの期限を自ら設定しておき、計画を立てて行動することが大事なのは言うまでもありません。

関連記事

Documents

人気ダウンロード資料

A-SaaS[エーサース]サービス概要資料
給与関連業務の忙しさをクラウド給与・年調システムで解消!

Ranking

人気記事ランキング

ページトップ