
意外な落とし穴!「軽減税率8%」と現行税率の違いとは?
税率変更を来年4月にひかえて、今改めて、消費税率の増税の是非が報道等で話題になりつつあります。
そこで今回は、平成28年度税制改正ワンポイント解説シリーズの【番外編】として、税理士事務所の皆様にとってもおさえておきたい「現行の消費税率8%と軽減税率8%の意外な違い」について解説いたします。
消費税率 8%は、「国税 6.3%+地方税 1.7%」の2つから構成されている
もともと日常生活では「消費税率=8%」という印象が強いところですが、
実際には「消費税(国税) 6.3%+地方消費税(地方税) 1.7%」という2つの税目から構成されています(※2016年3月現在)。
ここで特徴的なのは、地方税分の税率(1.7%)は国税分の税率(6.3%)を基準として計算されていることです。
その計算プロセスを理解するためには、税法の構成をおさえておくことが必要です。
まず、そもそも消費税法には「消費税率=6.3%」とだけ定められています。
(税率)
第二十九条
消費税の税率は、百分の六・三とする。[ 出典: 電子政府の総合窓口「消費税法」(最終改正:令和二年法律第八号)]
それでは、地方税分(1.7%)は何を根拠に課税されているのかといえば「地方税法」です。
その条文からも読み取れる通り、地方消費税額は「消費税額 × 17/63 」との計算で算定されます。
(地方消費税の課税標準額の端数計算の特例)
第七十二条の八十二 地方消費税については、(中略)消費税額を課税標準額とする。
(地方消費税の税率)
第七十二条の八十三 地方消費税の税率は、六十三分の十七とする。[ 出典: 法令データ提供システム「地方税法」(最終改正:平成三十一年法律第二号)]
結果、それぞれ別個に定められている消費税と地方消費税の合計税率が8%となっているわけです。
両社の関係を整理すると、下図の通りとなります。
消費税増税の主なポイント
消費税増税および軽減税率の導入に伴う影響を理解するために、主なポイントをまとめておきます。
まず、消費税に関連する法制の変更点は以下の通りです。
(1) 消費税率(国税)は、7.8%となる。
(2) 地方税率は、消費税額(国税)×22/78となる。
(3) 経過措置の対象取引については、現行税率を適用する。
さらに、平成28年度税制改正大綱では、軽減税率の導入が予定されています。
軽減税率の対象取引においては「国税6.24%+地方税1.76%」という内訳が適用されることが示されています。
四 消費課税
1 消費税の軽減税率制度
(2)軽減税率対象品目及び税率
軽減税率の対象となる課税資産の譲渡等は次のとおりとし、軽減税率は 6.24%(地方消費税と合わせて8%)とする。[ 出典: 「平成28年度税制改正大綱」平成27年12月24日 閣議決定 ]
要注意!落とし穴は、「8%課税取引における国税:地方税の内訳」
ここでふと、上記の「経過措置」&「軽減税率」に着目すると、注意すべき点が浮かび上がってきます。
それは、国税:地方税の内訳です。
すなわち、まず経過措置の適用取引については、改正前税率(国税6.3%+地方税1.7%=8%)を適用することとされています。
一方、軽減税率の対象取引においては、上述の通り、国税:地方税の内訳は「国税6.24%+地方税1.76%」となります。
(消費税率自体は8%と据え置くものの、内訳が改正後税率に即した形(国税 78:地方税 22)となっているものと読み取れます)
このように、両者は同じ8%課税取引でありながら、国税・地方税の内訳が異なることとなります。
消費税申告書への影響や会計データ入力準備もふまえて、税理士事務所・経理担当者におかれては要注意といえるでしょう。
以上の相違点をまとめると、下図の通りとなります。
最近は経済情勢や政局問題と絡めて「増税見送り」という見方も強まりつつありますので、
こちらの消費税増税の動向については、引き続き注視していく必要がありそうです。