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令和3年度電子帳簿保存法改正を解説!第2回 ~電子取引厳格化の詳細~

皆さん、こんにちは。
Mikatus(ミカタス)の中尾です。

今回は、令和3年度電子帳簿保存法改正の中でも、多くの中小零細事業者に影響がある電子取引の厳格化について、その内容を詳しく見ていきましょう。
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目次[非表示]

  1. 1.そもそも「電子取引」とは?
  2. 2.電子取引の対象となる書類
  3. 3.電子取引データの保存要件
  4. 4.次回予定


そもそも「電子取引」とは?

電子取引データの出力書面での保存が廃止され、電子データでの保存が義務化された電子取引ですが、電子取引にはどのような取引が該当するのでしょうか?

電子帳簿保存法では電子取引を以下のように規定しています。


取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。


要は、「取引情報の授受を電磁的方式で行う取引」が電子取引になるのですが、具体的にどのようなものが該当するのでしょうか?

国税庁が公開している「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関連】」の問4に電子取引に該当するものが以下の通り例示されています。


(1)電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
(2)インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ (PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットを利用
(3)電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用 
(4)クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
(5) 特定の取引に係るEDIシステムを利用
(6) ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
(7) 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領


この問4は請求書等の取引情報を受領する立場からの質問になっていますので、例示されている電子取引も受領するものとして記載されています。実際には、取引情報を発行する側が(1)~(7)のような方法で取引情報を発行している場合は、発行する事業者にとって電子取引に該当します。

中小零細事業者でも該当しそうな電子取引は(1)(2)などではないでしょうか。コロナ禍の中でテレワークを推進するために、請求書等のやり取りをメール添付に切り替えた事業者は相当増えているようですが、これは(1)に該当する電子取引となります。

また、物品やサービスをネット通販で購入し、インターネットのホームページから領収書などを取得するケースは(2)に該当します。従業員から提出される経費精算で添付される領収書等には、これに該当するものが含まれている可能性があります。

FAX機能付きの複合機を使用している事業者は(6)も気になるところだと思いますが、実際の運用により電子取引に該当するかどうか分かれます。国税庁の「​​電子帳簿保存法取扱通達解説」によると、通達7-8では以下のように記載されています。


ファクシミリを使用して取引に関する情報をやり取りする場合については、一般的に、送信側においては書面を読み取ることにより送信し、受信側においては受信した電磁的記録について書面で出力することにより、確認、保存することを前提としているものであることから、この場合においては、書面による取引があったものとして取り扱う


FAX機能付きの複合機を使用している場合、このような運用が一般的と思われますので、必ずしも電子取引に該当するわけではないことになります。ただし、​​複合機等のFAX機能を用いて、電子データにより送受信し、 その電子データを保存する場合については、電子取引に該当することになりますので、この点は留意する必要があります。


電子取引の対象となる書類

「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関連】」の問4では取引情報として「請求書や領収書等」が例示されていますが、取引情報に該当する国税関係書類には、以下のようなものがあります。


  • 重要書類(資金や物の流れに直結・連動する書類)
    • 契約書
    • 領収書
    • 請求書
    • 納品書
    • 送り状
    • 借用証書 など
  • 一般書類(資金や物の流れに直結・連動しない書類)
    • 見積書
    • 注文書
    • 検収書
    • 貨物受領書 など


重要書類と一般書類の分類は、スキャナ保存の規定によっています。スキャナ保存では、重要書類と一般書類で保存要件も異なっているのですが、電子取引では重要書類と一般書類は特に区別されていません。
したがって、請求書や領収書だけでなく、見積書などの一般書類を電子メールに添付してやり取りする場合も、電子取引に該当することになり、その電子データを保存しなければなりません。


電子取引データの保存要件

では、この電子取引データを電子のまま保存する場合に、どのような要件を満たさなければならないのでしょうか?

「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関連】」の問11の回答を参考に整理すると以下のようになります。問11で要件の説明は概要レベルのため、補足説明をつけています。


要件
補足説明
​​電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合に限ります。)
市販のシステムを利用する場合は操作説明書(オンラインマニュアルでも可)の備え付けが必要
見読可能装置(ディスプレイ・プリンタ)の備付け
保存した電子取引データをディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することできること
以下の検索機能の確保
  1. 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができること
  2. 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること
  3. 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること
左記の検索は一課税期間を通してできること

保存した電子取引データをダウンロードできる機能があれば、2. 3. の機能は不要
基準期間の売上高が一千万円以下の事業者がダウンロードできる機能を備えていれば検索機能は不要
真実性確保のため以下のいずれかの措置を行う
  1. タイムスタンプが付された後の授受
  2. 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
  3. データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
  4. 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け

問4の電子取引(1)(2)(6)(7)および(3)(4)(5)のデータをダウンロードしてから保存する場合は、 1. 2. 4. のいずれかの措置で対応


3. の措置が適用可能なのは、(3)(4)(5)のデータを
そのまま保存する場合のみ


真実性確保の要件で利用できるタイムスタンプとは、一般財団法人日本データ通信協会が定める基準を満たすものとして認定された時刻認証業務認定事業者によって付与されるものでなければなりません。この時刻認証業務認定事業者が提供するタイムスタンプは有償ですので、これを利用する場合は当然その分コストがかかることになります。

タイムスタンプを利用しないで、要件を満たした電子取引データの保存方法を考える場合は、真実性の確保については事務処理規程の備付けをベースに、検索機能を確保する方向性で考えることが現実的な対応ということになります。

なお、保存要件を満たした電子取引データの保存ができていない場合は、青色申告の取り消しの可能性も示唆されています(「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関連】」問42)。また、電子取引データを削除、改ざんするなどして、売上除外や経費の水増しなど不正を行なった場合は重加算税の加重対象となります(「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関連】」問40)。これらの点も留意しておく必要があります。


次回予定

ここまでの説明で、そもそも電子取引とは何か、どのような電子取引データを保存しなければならないか、そして電子取引データの保存要件についてご理解いただけたかと思います。

次回は、税理士事務所と事業者における対応の詳細について説明するとともに、弊社で提供予定の「電子取引データ保存システム(仮称)」についてご案内する予定です。

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