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令和3年度電子帳簿保存法改正を解説!第1回 〜保存要件の緩和と電子取引の厳格化〜

皆さん、こんにちは。
Mikatus(ミカタス)で会計システムの企画を務めております中尾です。

平成10年に施行された電子帳簿保存法、これまでも度重なる改正が行われてきましたが、令和3年度の改正はその改正規模の大きさから話題になっています。

特に、中小零細事業者にとっては、今回の改正で「電子取引データの出力書面での保存の廃止(令和4年1月1日以降行われる電子取引から適用)」という要件が新たに盛り込まれたことが最大のトピックです。放置すると、青色申告の取り消しといった厳しい措置を取られる可能性があります。

詳細は後述するとして、まずは今回の改正の全体像を見ていきましょう。


令和3年度電子帳簿保存法改正の背景

電子帳簿保存法の正式名称は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」です。平成10年の施行当時は、事業者が「自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成した」帳簿(仕訳帳や総勘定元帳など)や書類(決算報告書や請求書など)を、承認申請した上で電子保存する制度でした。平成17年e-文書法の施行に伴う改正で、事業者が紙で受領した請求書などをスキャナで読み取り電子保存することも認められました。この改正では電子取引という項目も追加されました。

国税関係帳簿書類と保存方法との関係は以下の図のようになりました。



図:国税関係帳簿書類と保存方法との関係


スキャナ保存により、会計の証憑書類も含めて電子保存が可能になることで、電子帳簿保存法への対応が普及することが期待されましたが、スキャナ保存の要件が複雑かつ事業者の業務フローの変更を強いる内容だったため、何度かの改正はありましたが、なかなか普及しませんでした。そのため、令和2年3月時点のスキャナ保存の承認件数は約4千件しかありませんでした。ちなみに、会計帳簿書類の電子保存の承認件数は、この時点で約27万件です。こちらも全事業者数から考えると、多いとはいえない状況です。

こうした実態から、経済団体などからは政府の規制改革推進会議などを通して要件の緩和を求める要望が出されていました。


令和3年度電子帳簿保存法改正の概要

令和3年度電子帳簿保存法改正で緩和された主な内容は、以下のようになります。

事前承認申請制度の廃止

会計帳簿書類の電子保存およびスキャナ保存については、従来承認申請を行い承認されてから保存を開始できることになっていました。
この事前承認申請制度が廃止されたことにより、保存要件さえ満たせば、会計帳簿書類の電子保存およびスキャナ保存ができるようになるため、「承認申請が面倒だ」といった事業者の声に応える改正内容になっています。


会計帳簿書類電子保存の要件緩和

  • 帳簿にかかわる訂正・削除・追加の履歴保存等の要件なしでも電子帳簿保存が可能
  • 従来の保存要件を満たしていれば「優良な電子帳簿保存」とし、過少申告があった場合の加算税を5%軽減
  • 令和4年1月1日以降に開始する事業年度から適用

従来の保存要件にあった、帳簿にかかわる訂正・削除・追加の履歴保存や帳簿間の記録事項の相互関連性の確保、検索機能の確保などの機能がなくても、会計帳簿書類の電子保存ができるようになりました。その一方で、これらの要件を従来通り満たした場合は「優良な電子帳簿保存」とされ、過少申告加算税を5%軽減するとしています。


スキャナ保存の要件緩和

  • 訂正・削除の履歴が確認できる(または訂正・削除できない)クラウド等で、入力期限内に入力されていることが確認できればタイムスタンプの付与は不要
  • 入力する者と確認する者が別の者でなければならない、処理の内容を確認するために定期的な検査を行う、などの「適正事務処理要件」を廃止
  • 令和4年1月1日以降保存を開始するスキャナ保存から適用

一定の要件を満たせばタイムスタンプが不要になり、事務処理フローの変更を強いられていた「適正事務処理要件」がなくなりました。今回の改正内容は、かなりの要件緩和ということはできますが、会計帳簿書類の電子保存に比べると、まだまだ細かい要件が残っており、事業者が無理なく運用できるかどうかが、この改正の成否を握る鍵になるのではないでしょうか。


以上の通り、会計帳簿書類の電子保存およびスキャナ保存では保存要件が緩和されています。
ところが、電子取引については、厳格化といわれるような改正内容となっています。


電子取引データの出力書面での保存の廃止

  • 令和4年1月1日以降行われる電子取引から適用

電子取引には、請求書などをPDFなどに出力し、メール添付で授受するようなやり取りが該当します。また、インターネットで物品やサービスを購入し、インターネットで発行された領収書をダウンロードする場合も電子取引となります。これらの取引では、従来書面に出力して保存することが認められていましたが、今回の改正で書面での保存はできなくなり、電子取引データの保存が義務化され、電子取引の保存要件を満たした保存を行わなければならなくなります。

電子帳簿保存法に電子取引の規定が追加された平成17年当時は、大企業を中心に利用されはじめたEDI(Erectronic Data Interchange:受発注などを電子データでやり取りする仕組み)が電子取引に該当するくらいで、中小企業にはまだ馴染みのない規定でした。その後スキャナ保存は改正が何度も行われたことで常に注目されてきましたが、電子取引が話題になることはほとんどありませんでした。

それが今回の改正で、電子取引で授受したデータを出力した書面で保存することができなくなってしまいました。コロナ禍で書面で郵送されてくる請求書の処理のためにテレワークができないということが話題になりましたが、テレワークに移行するために請求書をメール添付でやり取りする事業者は増えているのではないでしょうか。また、インターネットでの物品やサービスの購入も多くの事業者で行われているのではないでしょうか。


A-SaaSシステムでは、これまで電子帳簿保存法への対応よりも優先して取り組む課題があり、対応を見送ってきた経緯があります。

ただ、今回の改正により、多くの事業者に影響が及ぶ電子取引については対応すべきと考えております。詳しい対応計画については改めてお知らせいたします。

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